復活

□僕らなら
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俺はいつでも十代目の傍にいたい、役に立ちたい、信頼されたい、一番になりたい。
そんな綺麗な心だけじゃない。
触れてみたい、抱き締めたい、唇を重ねたい・・・・・。
ドロドロした熱の篭もる思いも抱いている。
その小さな肩を抱いて力一杯抱き締めたい。
少し綻んだ唇を啄ばんで、口の中を合わせて舐りたい。
そして、呼ぶのだ彼の名前を、決して普段では呼べないその名前を。
・・・・・・・
「・・・でら・・くん・・・獄寺君?」
ハッとする。
覗き込んでいる彼の顔が今にも口付けできそうな位置にあって、それがさっきまで巡らしていた妄想の続きのようで思わず近付いてしまう。
しかし、彼は逆に身を引いてしまう。
少し離れて、良いと思う位置まで距離は離れる。
残念だと思うと同時に、俺は安心してしまう。
やましい気持ちを知られずに済んで。
俺の心中の葛藤など知らない無邪気な顔が心配そうに俺を見上げる。
「ボーっとして危ないよ?」
「すいません。」
俺は自分が何に対して謝ったのか解らなくなった。
でも咄嗟に謝ってしまった。
彼は気にした様子も無く、微笑んで相槌のような返事を返した。
阿吽の呼吸のような何気ない、それでいて息の合ったやり取りがとても満ち足りた気分になる。
それが俺と彼の関係の距離の短さを現しているようで、それは出会ってそんなに時間の経っていない自分がこんなに親密になれたことが一番嬉しい。
しかし、その至福の時間は突然終った。
「ようツナ、それとスモーキンボム。」
真正面に現われた男。
金髪の彼はこの日本では悪目立ちする。
「ディーノさん。」
「ちっ。」
声を掛けてきた人物を彼は微笑み俺は舌打ちした。
歳は俺や彼より幾分上だろう、いつもゆるく口元を結び口角は常に上向いている。
それだけならば、好印象を与えるであろう彼の後ろには黒服のいかつい男達が控えている。
俺の隣りにいる彼は馴れた様子でヤツと親しげに会話をし、ヤツも彼と親しげにしている・・・。
「十代目、俺、ここで失礼します。」
俺は少し声を大きくして彼に言った。
ハッとしたような顔をして、それから微笑んで彼は言った。
「あ、うん・・じゃ、また明日ね。」
「はい。」
少し彼の笑顔に見蕩れて、それから答えた。
「気を付けて帰れよ、スモーキンボム。」
勿論、ヤツとは目も合わせないで来た道を戻った。

*****

さっきまで隣りにいたのは少し俺より背の高い灰色の髪の毛の彼を見送って、今度は金髪でグリーンの瞳を持った派手な顔立ちの人を見上げる。
「ディーノさん今日はどうしたんですか?」
リボーンが呼んだのだろうか?彼はあの悪魔のような赤ん坊の生徒だったのだ。
不安のような疑問に癖の無い笑みを浮かべて彼は答えてくれた。
「いや、何となく・・ちょっと暇になったから来てみただけだ。」
本当に暇などあるのだろうか?
彼はイタリアでマフィアのボスをしている。
地理はあまり得意じゃないけど、日本からイタリアがとても遠いくらい俺でも解る。ちょっとの暇や余暇で来れる距離じゃない。
だからこうやってなんでもないように言って俺の事を弟分だと言っては何かにつけて可愛がってくれる。
それはとてもあり難いんだけれど目の前に居る彼やさっきまで居てくれたあの人を思うとmzるきりダメな自分にはあまり実感が無い。肌の色も違うし瞳の色も違う、そんな外見を含めイタリアという未知の国からやって来た想像も付かない人々と映画くらいでしか知らないマフィアという組織。
改めて巡らしても実感はまったく沸いてこない。
ただ、ディーノさんには関してはこの人がボスだって解り易くその存在が示しているから顕著だ。
ディーノさんを中心に道いっぱいに出来た黒服のかたまりはみんなディーノさんのファミリーだから。
こう言うものなんだろうと、何となく想像できる、一番身近なマフィアだったりする。
ボンゴレがこんなファミリーとは限らないけど・・・・。
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