鳴戸

□メイデイ
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・・・オイ。
不意にまた声を掛けられた。
何度か呼んでいたようでこちらを見ていた。
ごめんなさい、なんですか?
僕はそう答えるので精一杯だった。
何でもないけど思い詰めたような顔をしてるから呼んでみただけだ、と答えられた。
だって・・僕はそれだけ呟いて口を噤んだ。
興味を示した相手は(彼は興味を示さなければ僕に最初から声などかけなかっただろうけど)噤んだ僕を注視した。
どうした?
そう言う彼はまた笑ってる。
僕は恐くなって、笑い返した。
何で恐いのに笑えるんだろう、不思議。
でも僕は笑った。
どうした?
また言われた、相変わらず表情を変えない。
僕はますます恐くなって笑った。
どうした、ハヤテ。
た、煙草を吸って下さい・・ア、スマさん。
煙草を・・
吸ってください。
僕はもう恐くて恐くて何がこんなに恐いのかも解らなくなってただそれだけを精一杯言った。
彼(アスマさん)は何故か微笑んで(!!)僕の頭の上に大きなその手を置いた。
僕の笑顔は引き攣っているかもしれない。
強張った笑顔を取り繕う事しか僕にはもう出来なくて後は何が起こるのか、何が僕の上に起こっているのか必死で考えた。

漠然とした何かははっきりとした形で僕の中に現われた気がした。
僕は恐いんだ。
恐怖してる。
それが“漠然”とあったのだ。
気付いたら僕は泣き出していた。
彼は優しく頭を撫でてくれた
僕はまだ泣いている
何が恐いのかもう解らない。
見えない恐怖に僕は怯えている
助けて
助けて
助けて
助けて









・・・誰か助けて。
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