ソラの奇跡たち

□第4話 怒りのソラ
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「……何? どうなってるの?」
「どうして何の説明もないんだ……。」

アークエンジェル≠フ食堂にて、人々は不安気にヒソヒソと会話を交わしていた。その入口には銃を持った兵士が立って、中の人々を威圧していた。

アークエンジェル≠ヘ、当初の目的通りアルテミス≠ヨと入港した。途中、アークエンジェル≠追っていたクルーゼ隊との戦闘があったものの、それをなんとか退けて。

アルテミス≠ヘヘリオポリス≠ェあったL3に位置する、ユーラシア連邦の軍事基地である。辺境の小惑星に造られた小規模なものである為、軍事拠点としての重要度は高くない。しかしこの基地にはどんな物体も、兵器も、レーザーでさえ通さない光波防御帯というシールド──通称アルテミスの傘≠備えていることで名が知れていた。

 最初は識別コードはおろか、その存在すら知られていないアークエンジェル≠ェ入港できるのか心配されたものの、意外にもあっさりと入港許可が下りた。ところが入港した途端、艦内に武装した兵士がなだれ込み、あっという間に制圧されてしまったのだ。そして、ヘリオポリス¥P撃時に本来の艦長を始めとする主だった士官のほとんどを失った為に、最も階級が高く艦のことに詳しいことから艦長になったマリュー、副長を務めるショートカットの黒髪に紫色の瞳を持つ厳格な性格の女性軍人のナタル・バジルール少尉、『エンデュミオンの鷹』の二つ名を持つエースパイロットである金髪碧眼の男性軍人のムウ・ラ・フラガ大尉はアルテミス≠フ奥へと連れて行かれてしまった。

 一方、他のクルーや避難民は食堂に集められた。起きている事態にわけがわからなくなっているのは、避難民もクルーも同じだった。

「ねぇ、ユーラシアって味方のはずでしょ? 大西洋連邦と仲悪いんですか?」

 サイはこっそりと、隣にいたCICで索敵を担当するこげ茶色の髪に同色の瞳を持つジャッキー・トノムラ伍長に尋ねる。サイの格好は、地球軍の兵卒──最下級の軍人が着る制服姿である。

 実はクルーゼ隊との戦闘の直前に、トール、ミリアリア、サイ、カズイは艦の手伝いを申し出たのだ。現在トールは副操縦士、ミリアリアはモビルスーツ及びモビルアーマーの戦闘管制官、サイはCIC、カズイは通信士を務めている。


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