ソラの奇跡たち

□第5話 示されたもの
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「あー、つっかれた〜……。」

 廊下を歩きながら、ルーナは背伸びをした。その格好はいつものつなぎ姿ではなく、一般兵と同じ緑色の軍服姿である。

 現在ルーナは、クルーゼやアスランと共にコーディネイターの本国であるプラント≠ノ戻っていた。しかしいるのは、軍本部の宿舎。理由は、プラント≠フ最高意志決定機関である最高評議会が開く査問会に呼ばれたからであった。ヘリオポリス≠ェ崩壊した真相を問う為である。

 本来ならばクルーゼとアスランだけで良かったのだが、「性能について技術者からの意見も聞きたい」ということで、急遽ルーナの同行が決定したのだ。

 そして今は、別の用事があるらしいクルーゼと別れ、アスランと共に査問会を終えて帰って来たところだった。

「やっぱり政治の場は怖いわねー。見てるこっちの息が詰まって落ち着かないわ。しかも演劇っていうか茶番っていうか、本来ありもしない台本があるみたいな……なんかやり取りの中身が決められてるみたいで寒かったのよね〜……。アスラン君もそう思わなかった?」
「え? あ、はぁ、まぁ……。」
「……そ・れ・と・も、いろいろ考えててそれどころじゃなかったかしら? ザラ国防委員長のこととか、ラクス様のこととか♪」
「ええっ!?」

 からかうような口調で言われた言葉に、アスランは顔を赤くしてうろたえる。

 ザラ国防委員長、とは、12人いる最高評議会の議員にして国防委員会の委員長を務めるアスランの父親、パトリック・ザラのことである。軍隊であるザフトに深く関わっている為か戦争を推し進める『強行派』であり、その鋭い顔つきから厳しい性格であることが見て取れた。

 ルーナは評議会に行く前にプラント♀ヤを移動するシャトルの中で顔を合わせたのだが、『親子』と言うにはあまりにも冷たいやり取りに疑問を抱いた程であった。

 またラクス様、とは最高評議会議長シーゲル・クラインの娘でありプラント≠ナは知らぬ人がいない程の歌姫≠フラクス・クラインのことである。実はアスランとは婚約者の関係にあるのだが、現在は血のバレンタイン≠ナ崩壊したユニウス・セブン≠フ追悼慰霊団の代表として、ユニウス・セブン≠ェあるデブリベルト──宇宙ゴミが地球の引力に引き寄せられて漂っている、ゴミの墓場のような場所に事前調査に行っているのだ。


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