STORY = B

□さみしいうさぎがみるゆめ(親就)
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痛い。


痛い。




いたい。




じくじくと、体中に刻まれた傷口から血が滲む。

そんな錯覚を覚える程の、焦燥にも似た感覚。


母が死に、父が死に、兄が死んだその時でさえ覚える事の無かった感覚。




腕が、


脚が、


胸が、




ぎしぎしと悲鳴をあげている。

実際身体には何も問題などありはしないのに、
傷のひとつもありはしないのに、
まるで血を流しすぎた時のように、全てが遠い。


膝はとうに地についている。

均衡を崩した体を支える両の腕も、
少しでも意識を外したら簡単に役を果たさなくなるだろう。




脆い。


こんなにも、脆い。


目を閉ざしていた現実にもろに曝されて、外郭を持たない剥き出しのこころが凪いだのだ、
と気付くまでに、まず何刻必要だったのか。




「………っ、」


思うように動かなくなった体のなか、ばらばらの精神を掻き集めて震わした唇から漏れたのは、音にもならない呻きだった。




なぜ。


なぜだろう。




なぜじぶんはうごけないのだろう。




ゆっくりゆっくり、
痺れたような腕を伸ばしながら考える。

それが目的のものに触れたとき、
ああきっとじぶんはかなしいのだ、
とどこか他人事のように思いながら、指先から伝播する感覚に、ばちりと弾けて夢幻から醒めた。




急速に意識が浮上する。

覚醒した思考が訴えるのは、わかりやすくも残酷な真実だった。




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