『明日、海行きたい!』
戸『お、いいねー。』
テレビから流れる天気予報が、明日は晴れだと教えてくれた。
近頃はあんまり遠出してないしってことで、海に行くことに。
蒸し暑い季節とはいえ、海水浴にはまだ少し早い。
でも足くらいは入ってもいっかって話になって、タオル持参で海へ向かった。
戸『 ぅおーー! 』
着いて早々、首にぶら下げてるタオルを握り締めながら、果てしない海に向かって叫ぶ。
時々強く吹く風に飛ばされそうになるキャップ帽を押さえながら、ふと隣を見ると、目を閉じて両手を目一杯広げて風を感じてる彼女の姿が。
満足げに微笑んでる。
風に遊ばれてる髪も嬉しそう。
『やっぱり最高だね。』
戸『うん。』
『水、冷たいかな?』と子供のように笑って言いながらサンダルを脱ぎ、波打ち際へと進む。
俺も同じようにサンダルを脱ぎ捨て、彼女へと続いた。
『気持ちいー!』
戸『あれっ(笑)思ったより冷たくないね(笑)』
『ねっ(笑)もうちょっと奥まで行ったら冷たいかな?』
戸『多分ね。でも、ここが今日の俺達の限界の域だからね(笑)』
『そうだね(笑)』
心地いい気持ちよさを感じながら、思い思いに海の中を歩き回った。
遮る建物も何もない海は、太陽の光をすべて受け止める。
でも、俺達人間にはそこまでの無限のパワーは備わってない。
『あっつーい…。』と、頭に手を置く彼女。
俺は笑いながら近づき、被ってたキャップ帽を軽く彼女の頭に乗せた。
『ありがと。』と嬉しそうに笑うその表情は、今日もまた、俺の心を満たしてくれる。
帽子をきちんと被り直し、俺の手を取った彼女。
『大好きな人と来る海ってさぁ、なんでこんなに最高なんだろうね。』
暑さのせいで赤いのか、照れてるせいで赤いのか、どっちなんだろう。
読み取る前に海に顔を向けたから、横顔に向かって答えた。
戸『無になれるこの海がゼロだとすればさぁ、大好きな人といるってことは、もうプラスにしか動いてないじゃん?』
『うん。』
戸『だから、うん。きっとそういう事だと思う(笑)』
『祥太って感じの答えだね(笑)』
帽子を押さえながら、そう言って笑ってる。
帽子のつばをつまんでこっちに引っ張り、振り向かせた。
ちょっと邪魔だからそのまま帽子のつばを斜めに向けて、顔を近づけ、軽く触れた。
戸『質問しといて笑ってんじゃねーよ(笑)』
『だって最高に幸せなんだもん(笑)』
どんなにマイナスな事が起きても、いつかはプラスになると思える。
君さえいてくれたら。
ずっと今みたいに俺のそばで笑ってくれてたらね。