満月の間
□心はいつも貴女の傍に
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「そんな…」
今までの浮かれた気分は吹き飛び、驚きと信じられない気持ちでいっぱいになっていた。
ふと、ヒノエが振り返り望美と視線が合う。
「望美…?」驚いたような瞳が望美を見る。
「…ごめんなさい。」何に対して謝ったのかは自分でもわからないが、泣きだしそうな心を押し止め、走りだす。
しばらくして本宮につくと、買ってきた荷物をしまうのもそこそこに、あまり使われることのない望美の私室に入り、そのまま床に倒れこむ。
「まさか…ヒノエぇ…」
徐々に涙混じりになっていく自分の声を聞きながら、気付けば深い眠りへと誘われていた。
暖かな物に包まれて、そのあと髪を優しく撫でていく。それはさらに深い眠りへと望美を引きずり込む。ほんの少し、目蓋の隙間から見えたのは、真紅の髪だった。
「ごめんな…起きたら説明するから。」
走っていった望美にあまりの驚きで立ちすくんで動けなくなってしまったヒノエ。
本宮に戻れば、いつも居るはずの場所には居らず、探しに探してようやく見つけた。
涙の跡が残る顔に胸を締め付けられる。
外は雪もちらつきそうな天気。何か掛けてやれるものを探し、望美に掛けてやったのである。
「愛してるよ望美。」望美の額に口付けた。