満月の間
□solitude
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『望美さんにお願いがあります。』
「なんですか?弁慶さん」
勝利に輝く君は、かわいらしい笑顔で振り返る。
壇ノ浦で平家を滅ぼしこの世界から怨霊が消滅した。だから君に“さよなら”を言わなくてはならない。
『早く向こうの世界にかえってください。』
「なら。弁慶さんも一緒にいきましょう。」
君の笑顔には僕の決意も揺らいでしまう。でも、これだけは譲れない。君の命を守るために…。
『それはできません。』
僕の返事を聞いて君の瞳が潤む。
「弁慶さんと一緒じゃなきゃイヤです。」
涙混じりの声は“一緒に来い”と告げる。あぁ。そんな顔しないで下さい…笑顔を見せて欲しい。
『だめです。僕も女性に手荒な真似はしたくないんです。言うことを聞いてください。』
有無言わせぬ強い言葉で押し通すと望美の瞳から一雫の涙が零れた。
「分かりました…さよなら弁慶さん。」
君を抱き締め一つ口付けをし、数歩下がると、君は光に包まれ次に目を開いた時にはその姿は消えていた。