満月の間
□雨の日はあなたの傍に
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熊野別当である彼と結婚して三ヶ月。
熊野には、深緑輝く夏が近づいていた。
長かった梅雨が明け、雨によって中止されていた漁も今日から再開されたようだ。
雨は嫌いなはずだった。傘をさすのがあまり好きじゃなかったから……。
「望美。何をしているんだい?」
ヒノエが入浴している間、縁側に座り、白い小さな布であるものを作っていた。
「う〜ん。できたぁ〜。」
できたものをヒノエに見せると困ったように首を傾げる。
「望美。それは何につかうモノなんだい?」
「これはね、“てるてるぼうず”って言ってね、天気を良くする、おまじないみたいなものなんだよ。」
そういって、てるてるぼうずをぶら下げる。
「ねぇ望美。それって逆向きじゃないかい?」
望美がぶら下げたてるてるぼうずは頭が下を向いていた。
「てるてるぼうずってね、頭を上にして下げれば晴れ、下にすれば雨にしてくれるの。」
「なんで、雨にしてほしいんだい?漁も再開して、おいしい魚が食べられるのに。」
確かに、望美は魚料理を気に入っていた。梅雨明けを待ち遠しく思っていたこともあったはずだった。