満月の間

□心はいつも貴女の傍に
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「まいどあり。」

「いつもありがとうございます。」

湊近くに立った市で買い物をしているのは濃紫の髪の少女。この市で有名な…いや、熊野一有名な少女である。

少女の名前は藤原望美。先の戦で、源氏の総大将“源九郎義経”と共に源氏を勝利へと導いた白龍の神子であり、現在は熊野別当の正妻である。

「別当殿は今日、お帰りかい?」

「はい。そうなんですよ。」嬉しそうに笑う望美に辺りがさらに活気づく。

「望美ちゃんが一人で出かけて、別当殿は怒らないのかい?」

「ヒノエには怒られてばっかりですよ。だから、内緒にしてくださいね。」

「はいはい。コレおまけだよ。」望美の買い物籠に小さな袋が入れられる。

「ありがとうございます。」

「またおいでね。」ぺこりとお辞儀をして駆けていく。

今日は一週間ぶりにヒノエが熊野に戻ってくる日。ヒノエが帰ってくる日には、決まって望美が手料理でもてなしていた。

「はやく帰って準備しなくちゃね。」
久々の夫の帰宅に弾む胸を押さえられない。
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