満月の間
□雨の日はあなたの傍に
2ページ/2ページ
「だって…だってね…」
じっと見つめるヒノエに恥ずかしくなって俯く。
「ねぇ望美。おしえて。」
請われるように言われては逆らうことはできなかった。
「だって…雨が降ってればヒノエくんが早く帰ってきてくれるから…。」
雨の間中止されていたのは、何も漁だけではなく、交易も中止されていたので、どんなに遅くても、ヒノエが帰ってこない日はなかった。
言ってから恥ずかしそうに頬を染める。
突然、ヒノエに強く抱き締められた。
「どうしたのヒノエくん」
「悪い。顔上げないで…」
少し照れた様な声音に望美はヒノエの背中に手を回し、二人の距離を限りなくゼロにする。
「オレがいなくて、望美はさびしい?」
抱き合ったままでヒノエが聞く。
「そんなの当たり前だよ。」
「望美。」
ヒノエの指が望美の顔を辿り、顎を上げさせ、瞳をあわせる。
どちらともなく唇を近づけ甘いキスをした。
「オレもお前と離れたくない。」
「でも、“熊野のため”でしょ。私は大丈夫よ。」
幸せ溢れる望美の笑顔にヒノエも自然な笑みをもらした。