満月の間

□雨の日はあなたの傍に
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「だって…だってね…」

じっと見つめるヒノエに恥ずかしくなって俯く。

「ねぇ望美。おしえて。」

請われるように言われては逆らうことはできなかった。

「だって…雨が降ってればヒノエくんが早く帰ってきてくれるから…。」

雨の間中止されていたのは、何も漁だけではなく、交易も中止されていたので、どんなに遅くても、ヒノエが帰ってこない日はなかった。

言ってから恥ずかしそうに頬を染める。

突然、ヒノエに強く抱き締められた。

「どうしたのヒノエくん」

「悪い。顔上げないで…」

少し照れた様な声音に望美はヒノエの背中に手を回し、二人の距離を限りなくゼロにする。

「オレがいなくて、望美はさびしい?」

抱き合ったままでヒノエが聞く。

「そんなの当たり前だよ。」

「望美。」

ヒノエの指が望美の顔を辿り、顎を上げさせ、瞳をあわせる。

どちらともなく唇を近づけ甘いキスをした。

「オレもお前と離れたくない。」

「でも、“熊野のため”でしょ。私は大丈夫よ。」

幸せ溢れる望美の笑顔にヒノエも自然な笑みをもらした。
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