「……」
ほんとに悲しい時には、涙なんか出ないのだ
そんな当たり前のことを知った18歳の春
『予備校紹介してやるぞ』
『受けてみてからでいいですよ』
苦笑いしながら、担任にそんな返事をしたのは、センター試験を失敗した1月
その後は、滑り止めにさえ落ちる始末で、周りには、高望みし過ぎなのだと言われた
なぜ、他人に干渉されなきゃいけないのだ。私の人生じゃないか
「…予備校、行かせてください」
結局、どこにも受からなかった。悲しかった。ずっと、遊ぶのも我慢して頑張ったから
でも、自分の夢を諦めきれなかったから、親に予備校に行かせてくださいと頼んだ
「…ふぅ」
予備校は、思ったよりも楽な所だった。寮の規則は高校よりも緩いし、授業はおさらいをしているような感じ。友達もできて、励まし合いながら頑張れている
これで、彼氏がいれば言うこともないんだろうな、なんて、贅沢なことまで考えていた
やがて、季節が夏に変わってきた頃、私は、不思議な人に出会った
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