バウンドリズム
□知らない優しさ
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……そうだな、普通に相談しよう。
オレはそう決めると口を開いた
「部長が…」
「ん?」
「部長が、今日、来たんです。」
「甘楽が? 何しに?」
「明日、女装したオレに会いたい、って」
「………は?」
「お、オレだってワケ分かんないんですよ、なんかオレには言えないらしくて。」
「いやいや…最初から最初から。
女装したお前に会いに甘楽がここに来た。
それは分かったけど、会って何したかったんだ?」
「だから、それがオレにも分かんないンスよ。」
「つーか、なんだ…女装のお前をアイツはお前だって分かってンのか?」
「…分かってないっぽいです。」
先輩は、はぁーっとワザとらしくため息をつきながら頭を抱えて
「お前、なんで言わなかったんだよ…」
「だ、だってあの空気じゃ言えないッスよ!!」
「いいか!! 大島曰く!
いや、話を聞いたオレの確信よりだがな、甘楽はお前に惚れたんだよ。」
「オレに?! なんで?! 男じゃないッスか?!」
「だーかーら! お前っちゃお前だけど、女装したお前にだよ!」
「……………はあああ?!!」
「大島が言うには甘楽は急用が出来たから部活に来なかったんだ、可愛い女の子見た後、あいつは明日部活が無いのに連絡よこさず帰ったんだ!! 急用によって!!」
「急用?
急用って…だって部長、オレん家に…」
「まだ分かんないのか?
あいつの急用ってのは女装したお前に会いに行くコトだったんだよ!!!」
「な……」
「いやーあの甘楽が!あの石頭が!!
最愛なるバスケ部の部員放置で女に会いに行くってどんな用件なんだろーなぁ♪」
「…笑えないッスよ。」
「オレは十分笑えるぞ。
まぁいい、じゃあアレ、暫く貸しといてやるよ。」
そう言って机の隣のをさし、
「甘楽とは中学からの仲だが、あいつ曰く、
『恋愛はお互いを知ってからにしよう。』
…だそうだから、突然喰われたりはしないぞ?」
「部長見てりゃそんくらいオレにだって分かりますよ」
「まぁそうだよな。 ははっ。」
この人…他人事だと思って…!
「…ただな、」
「え?」
「……いや、なんでもねぇよ」
「ちょ…何さりげなく後味悪いことしてんですか?!」
「おっと、もうこんな時間か。」
「先輩?!」
先輩は誤魔化すように立ち上がる。
「じゃ、オレ用済んだし帰るな。」
「え、」
「あ、この件はオレ以外に言うなよ?」
「恥ずかし過ぎて言う気なんか無いッスけど…」
「そうか、まぁ、そうだよな。
んじゃな。」
「あ、玄関まで送りますよ」
「いやいいよ。
お前はアレと明日の相談でもしてるといい。」
そう言って指さしたのは今回の元
オレはカチンと来て枕を全力で放るが、顔面目前で片手がそれを防ぐ。
「ちっ!」
パチンッと指を鳴らす。
……けど、先輩は静かで。
「…なー横山、」
「何スか?」
「甘楽なー、お前のコト気に入ってんだ。」
枕で顔を隠しながら言うもんだから、オレは声のトーンだけで感情を量ろうとするけど。
……ちょっと深刻なのかな、くらいにしか分からない
「なるようになるとは思うけどさ、アイツのこと、嫌ったりはしないでやれよ。」
「先輩?」
「…じゃ、帰るわ。」
ボスン、と投げ返された枕を抱えながら、オレは先輩が出て行くのを見ていた