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□たなばた。
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「覚えておるか、普賢。
織姫と彦星の関係。」
毎年この時期、同じ場所。
空を見上げながら、望ちゃんは必ず同じ言葉を言う。
「恋人同士じゃなくて、夫婦(ふうふ)。」
教科書を読むように、僕は答える。
喜びと混ぜた正解に目を細めると、また天体観測に移る。
大きな岩に、二人寝転んで、ただ星を見るだけの僕ら以外には無意味の行動。
腕を枕にした彼の瞳に映る幾千の星の輝き、遠い視線。
雨で湿った空気と、笹の香りが混ざる、繰り返す思い出。
僕は少し嫌いだった。
いつからか、毎年の質問に答える度、自分の立場を知らされるようで。
僕は、幼馴染みでしかないと。
彼へと指を伸ばしてみたいけれど、不安が彼へと伸ばした指を地面へと折る。
そんな思いを抱く僕は天(ソラ)に残って、彼は地へ降り立った。