鏡よ鏡
不思議な鏡
継母なんかやりたくないの
白雪姫をやりたいの
私
(song by 谷山浩子)
鏡よ鏡
昔々、ある所に一人の姫さまがいました。
正確にはもうすぐ王妃になる姫さま。
その姫さまは貧しい自国の為に、性別を偽って隣国に嫁ぐことを強制されてしまったのでした。
(言葉悪く言えば生贄。)
そんな立場に白い頬を少々赤く膨らませました。
姫さまは贅沢なんか望みませんでした。
けれど、とりあえず城の者を片っ端からぶん殴る人生を歩む方で。
……まぁ、城の全員抜きのようなことを繰り返していたのと、綺麗な顔が仇になってしまったのです。
当然、姫さまは不服でした。
(なんで隣国なんかに嫁ぐんだか。)
襲われたらそれを口実に殺ししてやろう、と秘めつつ、姫さまは一人、隣国までの道を歩んでいました。
すると、どうでしょう?
川からどんぶらこっこ……ではなく。
屍の山の一番上に揺りかごが置いてあるではありませんか。
人と関わるのを好まない姫さまではありますものの、血と好奇心に溢れる存在にとってそれは抗えない魅惑で、姫さまは靴が汚れる事など気にせず、屍を踏み、その頂の揺りかごを覗き込みました。
「こども……」
そこには助けの声も上げずに自分を見つめ返す子供が収められていました。
(……孕んだってことで。)
姫さまは隣国に追い出される口実になると考え、その揺りかごを拾い上げました。