bird's-eye view

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(――今のはちょっと痛かったな雲雀さん)


近づいてきた雲雀さんは、素早く、ほぼ垂直にトンファーを振り落とした。
トンファーの軌道を読み、頭上ギリギリのところで腕を交差させて受け止める。

――ここだけの話。私が自慢できるのは脚力だけなんだよね。
腕力は女子中学生の平均と大差ないから、これはちょっとキたね。両腕で受けたからよかったものの。


そんな内心の焦りを顔に出さないように、あえてニヤリと笑いかける。
すると雲雀さんは眉をぴくりとひそめて、まだ振るっていない方のトンファーを振り上げた。

もちろん私も負けてられない。
受け止めた方のトンファーを、右足で蹴り上げる。


蹴り上げたトンファーは雲雀さんの手から離れ、回転しながら部屋の隅へと飛んでいった。
蹴り上げた右足に勢いをつけ、そのまま回転。今度は右足を軸にして左足での回し蹴り。

入った。
――と、思いきや。ぎりぎりのところで、雲雀さんは防御に入っていた。残ったトンファーで攻撃を遮られていたのだ。

攻撃途中だったトンファーを無理矢理防御に持ってきた、その鋭い反射神経。


(やるな雲雀さん。そこらの殺し屋より強いんじゃないかな)


背後には開け放したままのドアがある。一旦、間合いをとろうと、素早く後ろへ飛んだ。
そして、廊下に出るか出ないかのところで間を置かずトンファーが振るわれたので、バランスを崩しそうになった。


(あ!ヤバイかも)


すぐに立て直し床を踏み直そうとしたが、思っていたよりも速く鋭いトンファーの追撃に一瞬気をとられてしまう。
そのせいで私ともあろう者が、足をもつれさせてしまった。

バランスを崩し、転倒の体制に入る。その隙を当然彼は見逃さない。先程よりも1.5倍速くらいのトンファーの猛攻を開始した。

一発当たってみるのも、彼の力量を見極めて戦略を立てるのにはいいかもしれない。
しかし、好意を持つ相手にトンファーで殴られることは当然、避けたい。何故なら私はマゾヒストではないからだ。


「足元、お留守になってますよ?」


バランスを崩した状態で、私が攻撃を仕掛けられるわけがない。だが言ってみるものだ。
ビタ、とトンファーのひと振りが止まった。
警戒心が強いのが仇になる瞬間だ。


一瞬、彼が自分の足に気をとられた瞬間、彼の両腕を両手で素早く掴む。
当然、バランスは崩れたままで。結果、私は彼を引きずり込むように、後ろに倒れ込んだ。

不様だが、攻撃を防げただけまだマシだ。


「…姑息な真似をするね、君」


私の上に跨がるような形で私を見下ろす瞳は、戦意剥き出しだった先程に反して、呆れているようだった。



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