bird's-eye view
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「だって殴られたくないですもん。トンファー、かなり痛いし」
以前、任務上の成り行きで、トンファー使いと一戦交えたことがあった。
不意をつかれ一発顔面にモロ食らいしたときは、痛みのあまり一瞬宇宙がちらついたのを覚えている。
あの痕よく残らなかったよなぁ、と痛々しい思い出に浸っていたら、すっ、と体に乗っていた重みが消えた。
「あ、再開しますか?」
「……もういい。時間の無駄だっていうことが分かったから」
どうやら興を削がれたので攻撃を止めてくれるらしい。
同時に私に対する興味も失ったらしく、彼は私に目もくれず、応接室のデスクへと戻っていった。
まあなんだ。敵意を剥き出しにされたいわけではないが、相手にされなくなるのも面白くない。
でも、これだけ強いトンファー使いと一戦交えて無傷で済んだのだから、今日のところはまあ良しとする。
「ふへへ。また来ますね!」
「もう来るな」
「次に来るときは手作り弁当とか引っ提げて来ちゃうかもしれません。キャッ☆私ったら健気すぎだゾ☆すみません自分で言っといて何ですが気持ち悪ッ!宇藤さん気持ち悪ッ!」
「もう来るな」
「雲雀さんってこう、変態を寄せ付けるオーラがありますよね。いや別にこの宇藤さんが変態だとかそういうこと言いたいんじゃなくて、なんかこう、善良な乙女を変態に目覚めさせるオーラもあるっていうか」
「今すぐ目の前から消えて」
「ソレ、今流行りのツンデレだって分かってますから敢えて空気読んで教室戻りますけど寂しいときはいつでも呼んでくださいね!冗談抜きで音速で駆け付けるんで」
「音速じゃ無しに光速で消えて今すぐに」
全く、これ程純粋な愛情を拒否されてもめげない私は、健気を通り越して怖いと思う。我ながらね。
怒りのトンファーが飛んでくる前に颯爽とその場を去った私は、教室の入り口でハラハラしながら私を出迎えた二人の女友達に向かって笑顔で言った。
「やっぱ一筋縄じゃいかないや!あの人」
そりゃそうよ、だってあの雲雀さんよ!?と私に怪我は無いか心配してくる花と、会いに行くなんて大胆だね!と笑顔で応援してくれる京子ちゃんに癒されながら、午後の授業が始まった。
放課後になったら、また雲雀さんをからかいに行こうと思う。
...to be continued
2009/07/01...up