∬月の嵐∬
□秘密
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智「…綾香ちゃんはまだ?」
『………綾香は、この世にもう居ないわ。亡くなって今年で3年目よ』
智の問に一瞬、目を閉じて告げた。
雅「Σ何で教えてくれなかったの?」
『教えてどうなるの?もう関係無いのに?』
智「…」
『さて、隆志、唯、翔子食べ終わったかな?もう行くよ』
子供達に声を掛け、席を立つ緋紗子
隆志・唯・翔子「うん♪」
頷いて、三人も席を立った。
『もう会うことは無いと思うけど応援してるから、頑張って…じゃっ』
そう言葉を残してカフェを出て行く緋紗子さん達の後ろ姿をずっと見送った。
雅「Σ待って、緋紗子さん!」
慌てて席を立ち、緋紗子さんの後を追う相葉ちゃん。
おいらと言えば緋紗子さんを追うことなんて出来なかった。あの時綾香ちゃんは心を閉ざして自己逃避してしまったけど緋紗子さんは体と心に傷ついてまだ癒えてないんだと思うと、おいらは…相葉ちゃんが羨ましいよ。
雅「……緋紗子さんに追い付けなかった…」
涙ぐみ、力無く座り込んだ相葉ちゃん。
智「今日の事は、みんなには内緒だよ?相葉ちゃん」
緋紗子さんと再会した事は、相葉ちゃんを除くメンバーには秘密にしていた。相葉ちゃんもメンバーがいる所では何も触れて来なかったけど物思いに耽る事が多くなっていた。
『ひみつの嵐ちゃん』収録日、久しぶりに5人が全員揃った。
二「一体どうしたんですか?相葉さん。調子が悪いんですか?」
雅「Σえっ?別に調子は悪くないよ。何で?」
キョトンとする相葉。
潤「本当か?お前が静かな事自体不気味なんだけど」
雅「し、失礼な!!俺だって静かにしたい時もあるよ!」
智「相葉ちゃんだってそう言う時があるって」
翔「相葉ちゃんもだけど智君も変だよ。何かあった?」
智「うんにゃ、何も無いよ〜」
マ「智、ちょっと…」
智「磯野さん」
マネージャーに呼ばれて楽屋外に出た。
マ「お前の話を訊いて俺なりに調べてみた。、確かにあの人は富山に子供3人と住んでる。これが調査書だ。お前に渡すが、メンバーに教えるかは任せる。」
マネージャーから調査書が入った茶封筒を受け取り戻った。
翔「磯野さん、何だったの?って、何その封筒」
智「ちょっとね(苦笑)」
収録が終わり誰もいない楽屋で調査書を読んだ。
澤渡 緋紗子
19XX年XX月XX日生まれ
富山市在住
現在、隆志(第1子)・唯(第2子)・翔子(養子・戸籍上実子)と同居
携帯:090-xxxx-xxxx
平成12年 介護福祉士免許修得
平成13年 離婚
平成18年 結城 綾香(従妹)に腹部を刺される。が、事故として処理される。
平成19年 結城 綾香は入院先(療養型施設)にて翔子を出産後死亡。翔子は澤渡 緋紗子の実子として届けられ受理。尚、翔子の父親は不明。
ガチャ────
翔「あれ?智君、まだ帰ってなかったの?」
智「Σ…お、お疲れ。」
翔に声をかけられ慌てて書類を鞄に仕舞う。
翔「?帰らないの?」
智「帰るよ。翔君は?」
翔「僕?僕も帰るよ」
帰る準備をする翔
智「そう…って、真っ直ぐ自分の部屋に帰るんだよね?寄り道はしないよね?」
翔「はは…今日は真っ直ぐ帰るよ。疲れたし」
緋紗子さんの所在が分からなくなってから翔君の生活は荒れた。勿論、仕事には差し支えた事は一度も無いけど毎晩、違う女の人(年上)の部屋へ行く様になった。
智「だったら、久しぶりにおいらンとこに来ない?飲もうよ。明日休みだし、おいら。翔君もでしょ?」
翔君を誘った。
翔「ん〜…OK.久しぶりにお邪魔しちゃおっかな♪」
智「決まり!」
翔君と連れ立って楽屋を後にしてTAXで一路おいらの家に向かう。途中、コンビニでビールやお酒とつまみを適当に見繕って帰った。