∬月の嵐∬

□秘密
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おいらの部屋へ入るなり、翔君の携帯が鳴った。



キッチンへコップを取りに入ったが途切れ途切れに会話が聞こえてきた。



翔「…だったら…面倒…別れ…



まただ。翔君は誰にも本気にならない。ってか、本気になれないみたい。後腐れの無い女性を選んでる様だけれど…あの容姿で優しいから女性は最終的に本気になってしまうんだ。


智「話、終わった?」



翔「終わったよ。ごめんね、来た早々」



智「うんにゃ。気にしなくても良いよ。さ、飲もう」


飲み出して数時間、程良く酔いが回ったのを見て翔君に訊ねてみた。



智「あのね…前から訊ねてみたかったんだけど、翔君は、緋紗子さんの事忘れられない?忘れられないから年上の色んな女性(ヒト)と付き合ったりしてるの?」



翔「…忘れたよ。何でそんな事訊くの?」



智「そう…おいらはまだ緋紗子さんの事忘れて無いよ。相葉ちゃんも、松潤もね。相葉ちゃん、休みの度に緋紗子さんを探しに行ってるみたい」



翔「……」



黙り込んだ翔君を、横目においらはあの書類の事を考えてた。そして、翌朝おいらは寝てる翔君を置き去りに羽田空港へ向かった。



智「あ、磯野さん?大野だけど…」



智が綾香行きの飛行機に搭乗したころ翔が起きた。



翔「…ん、智君?」



智の気配はなく探す為、布団を片付け、リビングのドアを開ける。



翔「…居ない…」



テーブルの上には、軽い朝食とメモが置いてあった。


翔「…何だよ、この手紙…(苦笑)」



因みにメモの内容は───



『出掛ける。


鍵お願い。


マネージャーに連絡済み』



この単文3つのみ



翔「…意味不明だし…」


と、翔の携帯が鳴った。



翔「…はい?Σ智君?今、何処?」



智『おはよう、翔君。今、富山。明日明後日と休み貰ったんだ。おいら…で、柴田さんから教えて貰った“白えびバーガー”どうしても食べたくてさ。いても経ってもいられなくって来ちゃった。って事で、みんなに宜しく言っといて』



翔「…はぁ?Σって、ちょっ、智君?…切れた。何なんだよ!一方的に切って、意味わかんねぇよ」



富山───



翔への電話を一方的に切った智は、空港の喫茶室にて緋紗子へ電話を入れた。



智「緋紗子さん?大野だけど…今、富山に来てるんだ。逢えないかな?ってか、逢いたい」



電話口で、緋紗子さんは驚き、拒否していたけど渋々逢うことを約束してくれた。



緋紗子さんと逢う時間までおいらは、翔君に宣言した通り“白えびバーガー”なる物を食べに行った。



夕方、ホテルにチェックインしシャワーを浴びて落ち着いた頃、緋紗子さんが逢いに来てくれた。仕事帰りなのだろうひと月前に遭った時より少し伸びた髪を一つに縛り部屋へ入って来た。



智「緋紗子さん」



『トップアイドルグループのリーダーが何でこんな田舎くんだり迄来るの!お休みなんならちゃんと休まなきゃ駄目でしょ!!それにしても、良く調べたわ。私としてはあなた達との関係は5年前のあの日に終わってるの』



智「…おいらは、まだ終わってない。ってか、緋紗子さんとの繋がりは終わらせたく無いよ。緋紗子さんの事、5年前からずっと好きだよ。貴女の事大切にしたい。勿論、隆志君、唯ちゃん、翔子ちゃんも大切にする」



『Σ智君!!な、何を馬鹿な事を言ってるの。君達と幾つ違うと思うの。君達のご両親とさほど変わらないのよ。それに…今、お付き合いしてる人がいるの』


緋紗子さんの告白においらは驚いた。



其れから暫く緋紗子さんと話したけどおいらの頭の中は“付き合ってる人”の言葉がリフレインしてて、上の空だった。



翌日、東京へと戻ったおいらは、ツアーに収録にと忙しさに忙殺されていった。
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