◆銀◆
□七夕。お登勢さん誕生日ネタ。
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『夢は見るものじゃなくて叶えるものだって言ってる人はいっぱいいるけど実際叶えられる人はそんなにいない』
「七夕までの間、店の前に笹を飾ることにしたから、あんた達も短冊に願い事書くと良いよ」
今日は7月6日、スナックの経営者であり、万事屋銀ちゃんの大家でもあるお登勢が万事屋を訪ねてきた。万年金欠なそこの主人は家賃の催促かと思い慌てて窓に手をかけ逃げ出そうとしたが、彼女の言葉を聞くと眉を寄せ振り向いた。
「そんな紙切れに願い事書いてお星様にお願いしたところで、家賃が帳消しになるのかよ?」
「馬鹿だね。それくらい自分の力で叶えな」
呆れたように煙草の煙りを吐くお登勢から、銀時は、面倒臭そうに頭を掻きながら短冊を受け取った。
「とりあえず貰っとくわ。ガキ供はこういうの喜ぶかもしれねぇし」
「元々そのつもりだよ。良い年した男が七夕ではしゃいでたらみっともないだろ」
口元に笑みを浮かべると彼女はくるりと向きを変え行ってしまった。閉められた戸を見つめ銀時はぽつりと呟いた。
「…あのクソババア…」
7月7日当日、珍しく仕事が入った銀時は朝から出掛けて行った。留守番を任された新八と神楽は、スナックお登勢の前にある大きな笹にそれぞれの短冊を括りつけていた。楽しそうに飾りつけをしている神楽の赤い短冊には「大人になりたい」と書かれていて、新八はギョッとした。
「………神楽ちゃん、大人になりたいって…」
「今年の私の目標ネ!!姐御みたいに男を踏み台にする良い女になるアル!!」
「や…、それはちょっと…本気でやめてほしいんだけど…って神楽ちゃん!?」
「新八は何て書いたアルか?どうせアイドルとデートしたいとか痛いこと書いたんだろコノヤロー!」
新八がわざと見えにくいところに飾った短冊を、神楽は新八の体を押しのけ強引に見た。
『姉上の料理がうまくなりますように』
「…姉上には内緒だよ…?」
「新八…、世の中にはどんなに願っても、叶わない夢もあるヨ」
神楽の表情はさっきまでのふざけ半分だったものと違い、明らかに同情の色を含んでいた。何故だか新八は泣きたくなった。
「そ…そういえば銀さんも書いたのかなぁ。昨日はあんまり乗り気じゃなかったみたいけど…」
「銀ちゃんのならさっきあったヨ。名前書いてなかったけど、空○みたいな汚い字で書きなぐってあったからたぶん銀ちゃんアル」
「神楽ちゃん、○知とか言っちゃ駄目だからね。当サイトは原作とは一切関係ありませんだからね。へぇー、銀さんのことだから甘味一年分とか書いたのかなぁ」
「んー…なんか悪口書いてあった気がするヨ」
「え?悪口…?あっ!あった!!これだこれ!!」
それっぽいものを発見した新八は神楽と二人でそれを確認した。
『来年もクソババアが年をとりますように』
「………何これ?」
神楽が訳がわからないというように首を傾げる。
「あ…、そういえば今日お登勢さんの誕生日だったような…」
「マジでか!?また妖怪に一歩近付いたたアルな!!」
「ちょっ、何言ってんの!?」
「クソババア誕生日おめでとう!!」
神楽は新八の言葉を無視し、掃除中の店へ入っていくとお登勢の元へ笑顔で駆け寄った。
「おやおや、知ってたのかい?」
「誕生日だから誕生日ケーキが食べたいアル!!」
「何イッテンダヨ、クソガキ!!今日ハオトセサンノ誕生日ナンダヨ!!テメェハ酢昆布デモシャブッテナ!!」
「まぁ良いじゃないか。この年だから誕生日がきても別に嬉しくもないんだけどね。せっかく祝ってくれたんだ。ケーキくらい食わせてやるさ」
「キャッホーイ!!さすがクソババアアル!!」
「お前も、そんなところに突っ立ってないで食べてくかい?」
「すみません!じゃあ、お言葉に甘えて…」