◆鋼◆

□軍の狗
1ページ/2ページ

上に行くためなら何だってする覚悟はあった。
そのためなら上官に自分の体を売ることさえ惜しまなかった。


今日は初老を向かえた小太りの少将に呼ばれた。行為が終わり、さっさと部屋を出ようとすると、突然呼び止められる。


「は…?鋼の錬金術をですか?」
「そうだ。アレは君の部下だろう?明日から連れてきなさい」
「…お言葉ですが少将、彼はこういう行為は経験がないと思います。少将が満足なさるかどうか…」
「ほぉ…。あの子供は処女なのかね…。何も知らない子供を一から教えるのもまた一興だな…」

嫌らしく口許を歪めた表情に思わず鳥肌がたった。とりあえず生返事をしてその場をやり過ごしたが、問題は明日だ。


さて、どうしたものかな


翌日、報告書を提出するために鋼のが司令部にやってきた。もちろんいつも通り扉をノックせず、上官を敬うような態度はカケラもない。

「まったく……こんな生意気なガキのどこが良いんだか…」
「何かおっしゃいましたかクソ大佐」
「こんな生意気なガキのどこが」
「繰り返すな!!」
「君が聞いてきたんだろう?」
「うるさい!!何?受付の姉ちゃんがオレのことカッコいいとか言ってたのか?」
嬉しそうに身を乗り出し聞いてくる彼を鼻で笑ってやった。
「まさか。職場にこんな麗しくて有能な上官がいるのに君みたいな豆粒目に入るわけ」
「誰が顕微鏡がなきゃ見えないようなミジンコ豆粒ハイパーどチビかぁァァっ!!?」

相変わらず『小さい』を連想させる言葉に過剰反応するようだ。

「その調子じゃキスもまともにしたことないだろうに…」

それなのにあの将軍は何を考えているんだ…

「キス…?馬鹿にすんな!そんくらいしたことあるし!!」
「言っとくが身内や友達へのほっぺにチューはカウントされないからな」
「えっ…そうなのか?」

あまりにも無垢な彼の発言に悪戯心が沸き上がってしまう。キョトンとしている彼の顎に手を掛け軽く上を向かせる。視線を合わせるとそっと顔を近付けて耳元で囁いてやった。

「教えてやろうか…?本物のキスってやつを」

声に反応してピクリと彼の肩が跳ね、次第に顔が青くなっていく。女性に言われたらたぶん赤くなるんだろうが…予想はしていたが彼にその気は全くないらしい。

「いっ、いいよ!!別にそんなもん知らなくても困らないし!」
「そうでもないよ…上官に媚びる時なんかは他にも色々知っておいた方が良い…」
「大佐…?さっきから何言ってんだよ?アンタ今日ちょっと変だぜ?」
「そうか…?」
「よく分かんないけど、疲れてんなら休めよ。オレもう帰るからさ!」

私から離れようとする彼の腕をとっさに掴む。振り向いた彼の目は怯えたように見開かれていた。

「…そんなに私が怖いか?」
「…別にそういうわけじゃ…」
「じゃあどうして逃げようとする?」
「…逃げてねぇよっ」
「ほう…」

強がる彼の姿に私の加虐心が煽られる。小さな体ごとこちらに向かせると強引に唇を奪った。

「!?……んんっ…ふっ…」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ