◆銀◆

□視線の先
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深夜の真選組頓所、真選組副長こと土方の部屋に突如訪問者が現れた。

「ナニしてんですか?」
「っ…!!なっ…ナニってお前っ、ノックも無しにいきなり入って来るんじゃねェェっ!!」

自慰をしているところを部下である沖田に見られてしまい、羞恥で赤く染まった顔で怒鳴りつけながら、慌てて服を整えた。

「取り込み中みたいだったんで」
「分かってんなら入ってくんな!!そんなに俺の弱みを握りたいのか!?そんなに俺を副長の座から引きずり下ろしたいのか!?」

胸倉を掴んで睨み付けたが、沖田は平然としている。

「続きしないんですかィ?」
「はぁ!?」
「なんなら俺が手伝ってやりましょうか?」
「なっ…」

再び土方の顔が赤くなる。

「心配しなくてもアンタが近藤さんで抜いてたなんて誰にも口外しませんぜ」
「お前何言って…!?」
「とぼけても無駄ですぜ。ネタはあがってんだよ。俺の部屋に、この間、土方さんの寝言を録音したテープがありまさァ」
「何でそんなの持ってんだよ!?テメェしょっちゅう俺の部屋に忍び込んでるんじゃないだろうな!?」
「盗聴器仕掛けただけでさァ」
「なおさら悪いわ!!外せ!!今すぐ外せ!!」

真っ赤になって怒る土方とは対照的に沖田は淡々と言った。

「土方さんが悪いんですぜ。アンタは隙だらけで危なっかしいから、気がついたらいつもアンタを見ていました」
「…隙をついて殺すためにか?」
「鈍い人ですねェ」

そう言うと土方を布団の上に突き飛ばした。

「っ…いきなり何しやが…!」
「俺は土方さんのことが好きなんでさァ。だから、いつも見てたから、アンタが誰のことを想っているのかも分かりやした」

「言っとくが俺は近藤さんとどうこうなるつもりは無いからな。あの人が幸せなら…俺は…それで良い」

土方の言葉に沖田が眉をひそめた。

「諦めるんですかィ?」
「近藤さんがホモになるなんてありえねぇだろ?」
「分かりませんぜ。姐さんに振られ続けたショックで土方さんに走ることもあるかもしれませんよ」
「無理だろう。雌ゴリラに走ったとしても男には走らないだろう。近藤さんは優しいから、もしかしたら少しくらい相手してくれるかもって思ったこともあったけど、でも同情で一緒にいてほしくねぇし」
「ふーん。近藤さんには優しいんですねィ」
「優しくねぇよ。あの人の重荷になりたくないだけだ。つーかお前、俺と近藤さんくっつけようとしてねぇか?やっぱり俺のこと好きなんて」

言い終わる前に唇にキスされた。

「いくら俺でも冗談でこんなことしませんぜ」
「……」

今まで沖田の言葉を冗談半分で聞いていた土方は顔を青ざめる。

「俺に抱かれるのと俺を抱くのどっちが良いか選んでくだせェ」
「は…?無理!!どっちも無理!!」
「土方さんの寝言テープが表に出回ってもいいんですか?」
「っ、テメェ汚ねぇぞ!!無理!!テープもヤるのも無理だから!!」
「何でィ、こんなに頼んでるのにケチケチすんなよ。俺も良い思いができるしアンタも気持ち良くなれて一石二鳥じゃねぇか」

再びキスしようとお互いの息遣いが分かる距離まで顔を近付けた。
しかし、土方の言葉に制止させられる。

「本当にそうか?」
「え…」
「良い思いができたとしても一時的なものでしかないだろう?こんなことしてもお前が傷つくだけだぞ…」

年長者が子供を心配する時のような顔をされて、沖田は苦笑した。
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