◆銀◆
□ある冬の日−午前−
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朝、布団から出たら異様に寒気がした。新八に勧められ熱を計ったら37度4分。
微妙...
「風邪はひき始めが肝心ですよ。どうせお客さん来ないだろうから大人しくしていて下さい。」
「どうせ来ないだ?こういう時にこそビックな依頼人が来るかもしれないだろう?」
「ありえませんよ。それよりお粥作ったんでさっさと食べちゃって下さい。あと食後にそこの錠剤飲んで下さいね。朝夕2粒ずつです」
「ごちゃごちゃうるせーな!!お前は俺の母ちゃんか!?」
文句を言いながら椅子に腰掛けると、向こうから機嫌良さげに神楽がやってきた。
「銀ちゃ〜ん!!今、姐御に電話したら午後からお見舞い来るって!!」
「なんてことしてくれてんのお前!!?」
風邪の時、一番会いたくねぇ人物じゃねぇか!!このまま家で大人しくしてたら、命の危険に曝される可能性大…
身の危険を感じた俺は、大人しく寝たふりをして隙を見て外に出た。
動いて汗かけば熱も下がるだろう。
適当にぶらついてると、焼き芋の入った紙袋を持った沖田君と出会った。
「旦那じゃねぇですかィ。こんな時間からフラフラしてるなんてよっぽど暇なんですねィ。」
「暇っていうか逃げてきたんだよ。たかが風邪なのにガキ供が大袈裟でさぁ」
「へぇ〜旦那も風邪ですか?馬鹿は風邪ひかないってやっぱ迷信だったんですね」
「何さらっと馬鹿扱いしてんの!?」
「うちのマヨラー男も風邪なんですよ。熱は汗かけば下がるとか言って、当番でもねぇのに見回り行きやがって」
風邪ひいた時の行動パターンまで一緒!?なんかショックなんですけど!!
「今、焼き芋食いながら奴を捜してたところなんでさァ」
「焼き芋はいらねぇだろ。つーか、なんでアイツを捜す必要あんの?」
「汗かきたいなら協力するって言ったのに怯えてさっさと見回りに行っちまったからでさァ。せっかく弱った土方さんを鳴かせてやろうと思ったのによ」
「ちょっとぉぉっ!!何怖いこと喋ってんの!?聞きたくないよそんな話!!頼むから俺を巻き込まないでくれ!!」
余計熱上がりそうだから!!あーなんか頭痛まで…
「そういうわけで旦那、焼き芋1本あげますから、土方さんを見かけたら伝えて下せェ。さっさと帰った方が身のためですよって。じゃあ俺行きますんで」
「…」
多串君も大変だな。
もらった焼き芋を頬張りながら歩くこと数分。突然背後から声をかけられた。
「銀時?」
「っ…」
顔は見てないがこの声は間違いなく奴だ。
あーあ…余計頭が痛くなりそうなのに会っちまったよ。
何となく無視もできず振り向くと
「ヅラァ!!?何その格好?」
セーラー服にポニーテール!!?
「ヅラじゃない桂だ。今、バイト帰りでな。この格好の方がオレが指名手配犯だとばれないだろう」
あえてバイト先がどこかは追究しない。
「仮にバレないとしてもある意味犯罪だよ。つーか痛い。」
「痛い?貴様どこか調子悪いのか?」
「いや…そうだけど、そうじゃなくて……、っ」
いきなりヅラの手が俺の額に触れてきた。
「少し熱いな。」
「お前の手が冷てぇんじゃねぇの?」
本当にヅラの手は冷たかった。
こんな寒空の下、ミニスカだもんな。
寒くないわけがない。
それなのにコートも羽織らないでセーラー服なんて馬鹿じゃねぇの。風邪ひくだろ。そんな細っこい脚してさぁ。
あっ、馬鹿だから風邪ひかねぇか。
「いや、冷たく感じるのはやはり熱があるせいだろう。風邪をひいてるくせにウロウロするな。馬鹿者」
「ハハハ…テメーにだけは馬鹿って言われたくねぇよ。」
「どういう意味だ」
不機嫌そうに眉が歪められる。
あー…コイツのこういう顔少し好きかも。
なんて、ありえねぇこと思うのはやっぱり熱があるせいだよな…
「これ以上ぶらついててもろくな奴に会いそうにねぇし帰るか」
「ちょっと待て銀時!!言っておくが俺は馬鹿なんかじゃ…」
「?」
ヅラがいきなり固まってしまった。
「オイ、いったいどうした」
「万事屋じゃねぇか」
俺が言い終わる前に再び背後から声が。
最悪…この声は今一番会いたくない相手のものだ。