◆銀◆

□ある冬の日−午後−
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朝起きたら、体がだるくて頭痛がする上に寒気までした。試しに熱を計ったら38度4分…副長である俺が体調を崩したら他の隊士に示しがつかない。
しかし今日は運が良い事に非番。一日おとなしくしていれば熱も下がるだろう。

「あれ?土方さんまだ寝てるんですかィ?しょうがねぇ俺が起こしてきてやりまさァ」

廊下から突如悪魔の声が聞こえた。奴なら俺を起こすためにバズーカの一発や二発ぶっ放しかねない。
慌てて飛び起きたのと同時に、襖が開かれた。

「……チッ、起きてやがったか。おはようございます土方さん」
「残念だったなぁ、俺の寝首をかけなくて。」
「嫌ですねィ、そんな腹黒いこと考えてませんぜ。ただ寝ている土方さんの額に落書きしてやろうと思っただけですさァ」
「充分黒いわぁぁ!!」

コイツがこんなんだからおちおち寝ていることもできない。

「それにしても今朝は随分厚着ですねィ。昨晩はそんなに着込んでなかったでしょう?」

総悟の目が獲物を捕らえた獣みたいに鋭く光った。
あれ?俺、獲物?

「顔赤いですね。熱でもあるんですか?」

総悟が近づいてきて俺は咄嗟に半歩後ろへ下がる。

「ね、熱は…あるけど大したことねぇし。厚着して汗かけば大丈夫だ」

下手に隠すとやつのS心を刺激しかねない。俺はできるだけ平静を装った。が、

「そんな厚着なんかしなくても汗かきたいんなら俺が協力してやりますよ。」

総悟の手が俺の頬に添えられた瞬間、ひどい悪寒がした。情けない話だが、俺は最近コイツが怖くて仕方ない。
気がついたら俺は総悟を突き飛ばして隊服を持って部屋を飛び出していた。

「近藤さん!!俺今から見回り行ってくる!!」
「ん?トシは今日非番じゃなかったか?」
「なんか(頓所内で)事件が起きそうな気がするんだ!!行かせてくれ!!」
「やる気満々だな!別に行ってもかまわないけど、オフくらいゆっくりした方が良いと思うんだが」
「そんな暇ねぇよ!!じゃあ、俺行くから!!」

近藤さんが後ろで「あまり無理するなよー」とか言ってる気がしたが聞いている時間はない。急がないと奴が来る。





そんなこんなで頓所を飛び出したのが5時間前。

見回りなんて口実作らなくてもオフだから外に出れたことに気付いたのが4時間前。

万事屋が女子高生といっしょにいる所を見つけたのが2時間前。
なんでもその女子高生はストーカー被害にあっているらしく万事屋に相談していたそうだ。
ストーカーなら万事屋より警察の方が良いんじゃないかと俺が言ったら「チンピラ警察は嫌だ」と泣きそうな声で言われた。
世間では、真選組は半分プータローみたいな万事屋以下だと思われているのだろうか。ショックだ…いやいや、あの女子高生が異常なんだって!!あんな死んだ魚みたいな目をした野郎を選ぶなんて

「そういや、あの女子高生どっかで見たような気が…」
「あの女子高生ってどの女子高生ですかィ?」
「!!」

考えごとをして歩いていたら目の前にいた総悟に気付かなかった。
俺は総悟と目が合うとダッシュで逃げ出した。
今、捕まったら確実に殺られる。

「ちょっ…土方さん!!」

案の定、後ろから総悟が追いかけてきた。つーかコイツ午後から頓所内で仕事じゃなかったっけ?何で今ここにいるんだよ!?

必死で逃げること数分。やばい…もう息切れしてきやがった。しかも総悟を撒こうとして人通りのない狭い道に入っちまったし、今捕まったらどうなるか分からない。

「!?」

いきなり目眩がして立っていることができなくなった。
地面に倒れそうになったところで手を引かれ、総悟の方へ倒れ込んだ。

「……総っ…」
「お疲れ様でした土方さん」

見上げると総悟が俺の額を撫でてきた。
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