◆銀◆

□土方君苦労話
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うちのクラスの桂小太郎は、大人しそうな顔して、学校一の問題児高杉やボンボンの坂本とよくつるんでいる。別にそれだけなら問題はないのだけれど、

「うちは長髪禁止だって前にも言ったよな」
「悪いが見逃してくれないか。生活が厳しくてバイトしてるんだが、髪が長い方が便利なんだ」
「じゃあ髪切ってバイト行った時にヅラ被れば良いだろうが」
「嫌だ!!そんなことしたらヅラと呼ばれても否定できなくなるだろうが!!」

担任の銀八とかがからかって言うあれか。確かに常にヅラなんて呼ばれてたら虐められてるみたいだな。

「男が髪くらいでグダグダ言うなよ。モテないぜ」

桂のとなりでふんぞり返ってるのは例の問題児高杉晋助。つーか、何でお前がここにいるんだよ。俺が呼び出したのは桂だけだぞ。

「せっかく綺麗な髪なんだから切るなよ」
「高杉……」

おい、何二人の世界作ってんだ。
俺は軽く引きしながら、桂に質問した。

「ちなみにお前のバイト先ってどこだ?」
「……秘密だ」

目が泳いでいる。怪しい。

「言えないなら髪切れ」
「は?てめぇ誰に向かってもの言ってんだ!?」

桂だよ!!何でお前がキレる高杉!?つーか、こいつ危ねぇ!!

「失礼しやーす。あれ?おとりこみ中でしたか?」


助かった!!


「いや大丈夫だ。どうかしたか総悟?」
「松平先生から面白い写真を入手しやしてね。これは是非土方さんに見せてさしあげようと思いやして」

……嫌な予感がする…

「二丁目のオカマバーで売ってた写真らしいんですけど」

ペラリと差し出してきた写真に写っていたのは、化粧をしてるが間違いない…桂だ。松平先生がこれを持っていたってことはつまり、オカマバーに行っていたということで…ショックだ…いや、今はそれどころじゃない。

「おい、これはいったいどういうことだ?」
「それはうちの母だ」
「なんで母ちゃんがオカマバーにいんだよ!?お前男から産まれてきたのか!?」
「馬鹿か。そんなことあるわけないだろう」
「じゃあ、お前の母ちゃんは女なのにオカマバーで働いてるってことか?」
「母ちゃんじゃない桂だ」

阿保か。自分からばらしてんじゃねぇか。

「心配するな。お触り禁止の健全なところだ」
「オカマバーの時点で健全じゃねぇよ!!」
「煩いやつだな。本人が大丈夫だって言ってんだから良いじゃねぇか」

お前は黙ってろ高杉!!なんて実際に言えない駄目な俺。

「それにしても美人ですねィ。土方さんも化粧してみたらどうですか。近藤さんが振り向いてくれるかもしれやせんよ」
「はぁ!?ちょっと待て!!何でそこで近藤さんが」
「近藤?誰それ?」
「知らんのか高杉?ほら、あのゴリラみたいな風紀委員長のことだ」
「ああ、あのゴリラか。アンタ趣味悪いな」

お前が言うなホモ野郎!!

「言っとくけど俺はノーマルだからな!!」
「照れねぇでくだせぇ。愛に性別なんか関係ありやせん」

総悟がニヤリと笑った。またコイツは俺を陥れようとして!!

「トシィ、まだやってるのか?」

噂をすればなんとやら。ゴリ…じゃなかった。近藤さんが来てしまった。

「アニメの再放送録画し忘れたから今日は帰るな。委員会の方よろしく!」
「はぁ!?アンタそれでも委員長か!?アニメの再放送くらいで!!」
「アニメって言ってもただのアニメじゃないぞ!!名犬パトラッシの心暖まる感動物語なんだ!!」

パトラッシ?なんか聞いたことあるようでない名前…

「そういうわけだから、じゃ!!」
「ちょっ、近藤さん!!」
「心配しなくても副委員長の俺がいるから大丈夫でさァ」

副委員長は俺だっつーの!!

「総悟は頼もしいな!!じゃ、あとはまかせた!!」

そう言うと近藤さんはバタバタといってしまった。


「じゃあ俺らも帰るかヅラ」
「ヅラじゃない桂だ」

桂はさりげなく鞄を持ち立ち上がった。

「おい!!何どさくさに紛れて帰ろうとしてんだよ!?」

怒鳴りつけると案の定高杉が睨み付けてきた。ここで引き下がるのはしゃくだが、不良でホモなんて相手が悪すぎる。下手に動けば、高杉が何をしでかすか分からない。風紀委員としてこれ以上問題を増やすわけにはいかない。

「……あまり遅くまでバイトするなよ桂」
「了解した」

本当に分かったのかよ。





「お疲れ様でした土方さん。」
「ああ、胃がキリキリする…」





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