◆銀◆

□満たされない
1ページ/1ページ

深夜2時、いつもの万事屋なら皆寝静まっている頃、銀時は尿意を催して体を起こした。目をこすり、けだるげに立ち上がると、台所の方から何やら物音が聞こえる。


「ん…風かぁ?窓開けっ放しにしてたっけ…」


音が聞こえる方へ行こうとして立ち止まった。今日は寒かったから窓など開けていない。戸締まりはしっかりしていたはずだ。


「ま…ま、まさか幽……っ、いやいや!!いるわけないって!!あんなの実在しないっつーの!!」


銀時はわざと大きな足音を立てながら厠へ向かった。なんとなく、幽霊だったら大きな音を出せば消えるのではないかと思ったからだ。
しかし、厠から寝室へ戻ろうとした時も、相変わらず物音は消えていなかった。


「もしかしたら幽霊じゃなくて泥棒かも…」


銀時は、万が一幽霊だった時のことを考慮し、小さな同居人を起こすため押し入れへ向かった。


「か…神楽ちゃ〜ん。朝だよ〜。卵かけご飯の時間だよ〜」


おもいっきり夜なのだが、こう言った方が同居人が起きてくれると思ったのだ。しかし、しばらく待ってみても起きてくる気配はない。


「爆睡してんのかな…おーい、神楽ぁ」


押し入れの戸を開けると、丸められた布団だけで、本人はいなかった。


「あいつ……!!」


銀時は慌てて、台所へ向かった。



台所へ行くと電気は消されていたが、冷蔵庫から光がもれ、その前には桃色の髪の少女。


「…こんな時間に何やってんだよ?うちの少ない食料貪り食いやがって」


銀時が声をかけるとビクリと肩をゆらし、口に食べ物を含み少女が振り向いた。予想外に、彼女の顔は深刻で辛そうなものだった。


「銀ちゃん…」
「な…、何泣いてんだよ神楽!?」
「どうしよう…食べても食べてもお腹いっぱいにならないヨ……こんな時間に食べてたら美容に悪いってわかってるのに…」


少女の目からはぽろぽろ涙が零れた。


「神楽…お前……」
「助けて、銀ちゃん…」


神楽は銀時の方をじっと見つめた。彼女の足元には今日の朝食になるはずだった卵の殻や、特売日に買い込んだパンの袋が落ちている。
銀時は、どう応えて良いかわからなかった。こんな顔をする神楽を知らない。まるで誘うような目をする少女に鳥肌がたった。


「ねぇ、銀ちゃんは知ってる?女は食欲が満たされると性欲も満たされるらしいネ。お腹いっぱいにならない私は一生性欲も満たされることないヨ」
「っ……」




俺は、どうしたら…








神楽が痛い子ですみませ。性欲と食欲の関係はうろ覚え。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ