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□ラナキュア
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一行は、イニスタ湿原に立ち寄っていた。アニスが『私達もだいぶ強くなってきたし、ベヒモス倒しに行ってみようよ〜♪』と言い出したからだ。ジェイドも今の自分達なら、と了承し、1時間程前に辿り着いた。そして、討伐に成功したのはつい30分前のこと。今は、それぞれ自由行動をしていた。すぐに出てもいいのだが、あんな強大な魔物を倒した後だ。男性陣はともかく、女性陣がすぐに動き出せる訳がない(アニスの場合は動かない、のだが)。
「はぁ〜っ!もう、つーかーれーたぁ!誰よぉ!ベヒモス倒しに行こうとか言い出したの!」
アニスは、湿地である地面に座る訳にも行かず、仕方なく石の壁にもたれかかった。そして、ぷぅっと頬を膨らませながら、そんなことを言う。
「貴女ですよ、アニス」
「う"……っ」
ジェイドにそう切り返されて、戦闘でその場にジェイドとルークがいない時のような低い声になった。
「わたくし、あちらを見て参りますわ」
「へっ?!皆ちょっと待っててくれ!ナタリアッ俺も行くよ!」
すたすたと歩き出してしまったナタリアの背中を追って、ガイは慌ただしく走って行った。アニスは、それに対して呆れたような表情を見せる。
「ガイってば、相変わらずナタリア限定で過保護〜♪」
「そうですねぇ♪」
ジェイドとアニスは2人してニヤリと笑ったが、ルークとティアは何のことか分からなかったのか顔を見合わせて首を傾げた。
「くしゅんっ」
さっきのはある種の噂話、だが被害はガイ本人ではなくナタリアに及んでいた。ふるり、と身体を震わせて小さくくしゃみをした。ジェイドとアニスの2人が言うように『過保護』なガイは、誰かが噂をしているなんて冗談じみたことも言えず、心配そうな瞳をナタリアに向ける。
「風邪でもひいたのかい?」
「いいえ。大丈夫ですわ。大方、誰かが噂話でもしているのでしょう」
確かにその通りだったが、王女のくせに何故そんなことを知っているのか。ガイは、呆れた様に苦笑いを浮かべた。
「君は時々王女らしくないな……」
「まあ!綺麗な花が咲いていますわ!」
ナタリアには、今のガイの発言は届かなかったらしく、目を輝かせて走って行った。
「はあ…」
ガイは溜め息を吐きつつナタリアが走って行った方に歩き出すが、さっきの発言がナタリアに届いていなかったのは幸いかも知れない。聴こえていたなら、ナタリアはわざとガイに抱きついていただろう。