たまわりもの。
□君に触れて/霜庵よもぎ様
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「ティア、こないだの本返しに来たよ」
「あら、もう読み終わったの?」
「あぁ。ほら、期間開けると読まなくなっちまうからさ…」
「ふふっ。気にしなくても良かったのに。判らない所とか無かったかしら?」
「う〜ん。特には、って感じだな。じゃ、ありがとな」
「どういたしまして」本を受け取ろうと、ティアが手を伸ばした。
「あ…っ」
「…!」
一瞬、触れた手を見つめ、互いの頬を僅かな朱が染める。
「ご、ごめん…」
「こ、こちらこそ…」 「えと……それじゃ、また夕食の時に!」
「あっ、ルー…!」
ばたばたと、慌ただしくルークが部屋を出ていく。
「……。」返された本を摩ってみる。ほのかに熱を持つ部分―ルークが掴んでいた所だ―に当たり、その手を留めた。
「こんなに温かいのに…」
ねぇ、ルーク。
私が欲しいのは、こんな本越しの温もりなんかじゃなくて……
―君に触れて―