たまわりもの。

□14:00/みん様
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ベッドに散らばる、淡い茶の長い髪に無意識に触れていた。小さな体によく似合う、薄桃色のワンピースを着て、午後14時のひかりを浴びて眠る、まだ幼さの残るかわいいひと。ふと、彼女は本当に桃色が良く似合うと、眼鏡を押し上げながら思った。よく日の光を吸い込んだシーツに頬を押し付けて目を閉じている彼女は、そういえば軍人とはいえまだ13才だった。大人というには幼な過ぎる歴史の年数は、まだまだ人としては未完成だという証。それでも、その子供らしい未完成さを補おうと努力する様をよく目にしている。彼女の年なら子供らしさなんて隠しても、隠しきれずにはみだしてしまうのに。だけど、そんなところが可愛らしくて、微笑ましかった。自分にはない部分だから。だからいつもついつい、彼女を目で追い掛けてしまうのかもしれない。

「……ん……っ」

ころりと、小さな彼女が寝返りをうった。そうして、表情が見えなくなってしまうとどうしてか、暖かかった心が冷たくなりそうで、ベッドに深く腰を沈める。手をついて、彼女の体を横切ってからもう一度、柔らかな寝顔を視界に入れた。すると不思議なことに、体は陽が差したように暖かくなる。

「……全く。こうして眠っている時は本当に可愛らしいんですけどね」

呟きながら、頬に指を寄せた。起こしてしまわないように、始めは人指し指の先から徐々に本数を増やして、最後には掌で頬を包み込んだ。今だけは、彼女の許しを得ていなくてもこうして触れられる。普段なら、彼女は精一杯拒否してくるだろうけど、今だけは。

「お願いしますよ」

誰かにではなく、彼女に触れたいという欲求を叶えたい。こんな気持ちは感じたことがなくて、きちんと言葉を持って伝える事が出来ないけど。相手が眠っている今なら言えそうな気がした。


「……アニス。私は、あなたに触りたいんです。あなたに触れると暖かくて気分がいい。いや、違いますね。……こういうのを、幸せと呼ぶのでしょうか。とにかく、こうしていたいんです」



ただ、彼女に触れていたい。出来れば眠っていない間に。もっとワガママを言えば、心ごと重ねてしまいたいと、ジェイドはそう思った。
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