たまわりもの。
□―with me.―/霜庵よもぎ様
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時折、少し不安になるの。
あなたが髪を切った時、私はあなたのこれからを見ていると言った。
自分で考え、自分から動く。
そう決意したあなたを、ずっと見守ると、そう言ったわね。
同時に、いつでも見限る事ができる、とも…
それは今でも変わらない。
でも、実際あなたはそんな事無かったし、これからも…あなたを見ていたい。
そう、思うの。
そう、思うのよ。
でもね、ふとした瞬間、そんな私はどうなんだろうって思うの。
あなただけが成長して…
見守るだけの私は、何も変わらない。
あなただけが前に進んで、私だけが、置いてけぼりなんじゃないかって。
―with me.―
するとあなたは一言。
「…ばーか」
と言って、額を小突いた。
「った!…もぅ、何するのルーク!」
「お前、人にばかばか言ってる割に案外自分も馬鹿だよな」
「どういう意味?」
じとりと睨めば、対して彼は可笑しそうに笑った。
「そんな顔すんなって。う、ん…つまりさ」
しばし考え込むように、ルークが眼を閉じる。
「ティアだって成長してる。いや…成長してるっつーか……きっと、それが本来の姿なんだろうな」
「本…来、の…?」
意を伺うように尋ねると、
「物腰が柔らかくなったり、すぐに照れたり、少し心配性だったり…それから、最近は笑ってくれることも多くなったしな…。それが元々の“ティア”なんだろ?」
「ん……」
改めて、そう言われると何だか気恥ずかしくって。
肯定も否定も無く、ただ言葉を濁した。
「ははっ、照れてやんの」
「もうっ、からかわないでちょうだい!」
「いたっ!ちょ、やめろってティア!!」
少しだけ力を込めて、ぽかすかと彼の胸元を叩く。
何て幼稚な照れ隠し…。
自分でも悲しくなる位それを自覚する。
「ティーアっ」
不意に優しく手首を掴まれ見上げれば、思った以上に近く、翠の瞳が覗き込んだ。
どくん、
一際大きく鼓動が鳴る。
まるで身体中を震わす様なそんな錯覚。
「…俺嬉しいんだ。
自分が変わろうとした事で、誰かのきっかけになれたなんて…」
照れの残る顔で、彼は苦笑した。