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□ラナキュア
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「ああ、確かに綺麗な花だな」

ガイは、ナタリアの後ろからその花を覗き込んだ。花びらの多いオレンジの花で、器の様な形をしている。

「ええ。何と言う名前の花なのでしょう。どこかに調べられる所はないでしょうか…」

「ダアトの教会の図書室なら分かるんじゃないか?」

顎に手を当てて俯くナタリアに、ガイはそう進言した。

「そうですわね!ここから出たら、立ち寄ってみましょう」

湿原を横断するのには2週間程かかってしまうが、バチカル側の入り口から入ってその付近でうろついただけなので、出るのにそんなには時間はかからない。

「はあ…」

早くも次の目的地が決まってしまったことに、ガイは再び溜め息を吐いた。

「………きゃああぁぁっ!!」

ナタリアは、いきなり叫んでガイに飛びついた。当然のごとく、ガイは身体を固まらせる。

「ど、どどどうしたんだナタリア!」

「か、カエルが…っ!カエルがいましたわ!」

確かに、綺麗な花の傍に小さな緑色のカエルがいた。魔物ではない、普通のカエルの様だ。

「ば、バチカルの廃工場でくくクモの形した魔物を倒してたじゃ……ないか…っ」

「それとこれとは訳が違いますわ!」
なおも、ナタリアはガイに抱きついていている。アリエッタの件でコーラル城に行った時、ネズミがいたと騒いで抱きついてきたアニスは反動で弾き飛ばしてしまったのに…と、回らない頭で考えた。だいぶ慣れてきたとは言え、まだ女性が怖いのは確かだった。多分、ナタリア以外の娘が抱きついてきたら、あの時アニスにしたのと同じことをしてしまうんだろうなー…などと、のん気なことを考えながらも、必死に身を縮こまらせていた。

「お、おお追い払うから放してくれないか!」

さすがにもう耐えられなくなったのか、ガイは微かにナタリアの身体を腕で押し返しながら言った。

「わ…分かりましたわ……」

そう言ってガイから離れたナタリアは涙目になっていたが、むしろガイの方が泣きたい気持ちで一杯だった。もう何度目か分からない溜め息を吐き、手早くカエルを追い払う。

「もう大丈夫だ。目を開けていいよ」

そう声をかけられて、固く閉じていた瞳を恐る恐る開いた。確かに目の前にあるのは綺麗な花だけで、先ほど自分が怖がったカエルはどこにもおらず、ほっと胸を撫で下ろした。
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