たまわりもの。

□everlasting love/月影来夢様
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(…う、ん……?)

突如として意識が戻る。ここはユリアシティ…?俺は確かに音素が乖離して消えたはず…。
ならこれは一体?

(…ティア!!)

弾けたように彼女を思い出し、想う。
今居る場所がユリアシティで、意識があるなら行く場所はただ一つ。
もう会うことはできないだろうと思っていた彼女にもう一度会える。
そう思うと、いてもたってもいられなかった。

ティアの部屋のドアを開けようと、力をこめる。

(…あれ?)

そう思った瞬間、見慣れた彼女の部屋が視界に広がる。
振り返ればドアは閉まったまま。

(すり抜けた…のか?)

ここに来るまでに気づいたが、俺の姿は人には見えないらしい。
俺の声も聞こえない。
さらに、体の感覚から触覚が抜け落ちている。
何に触っても、暖かい、冷たいどころか、触った感覚がない。
すり抜けるだけ。
…言ってみればお化けの類か。

(ナタリアが怪談話をしている時は、そんなことあるはずないって思ってたけどな…)

皮肉なものだと、ふっと嘲笑った。どくん、と心臓が大きく脈打つ。
伝えている。
愛しい彼女が、この壁の向こうにいると。

「兄さん、教官、…ルーク…」

ティアはセレニアの花に囲まれた墓の前に、一人力なく佇んでいた。
目の前にいる少女の虚ろな瞳は、なにも写してはいない。
ティアはこの戦いであまりにも多くのものを失いすぎた。

(ティア、ごめんな…)

自分らしさを守るために、言葉の棘を武器にして、棘の鎧で自分を守って。
ふわりとティアを自分の腕で包み込む。
彼女が自分のために言葉の棘を出すのなら、俺は自分のために、彼女の頭を撫でてやる。
もう強がらなくていいと教えるために。

「ルーク、消えたくないって言ってたのに、どうして…!!」

(…ティア、俺はここにいるよ!!)

どんなに叫んでも、どんなに抱き締めても、伝わらないとわかっていたけど。
…俺がここにいることも、声も、そしてこの想いも。

「ルークのばか…!!」

(…ティアっ!!)

ティアの瞳に光る一粒の雫。
俺の存在を必死に伝えようとしても、それはかなわず。

愛しい。
ティアが、好きだ。

どうしようもない思いだけが膨らんでいく。
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