※未来設定で恋人設定なキョンハルです。自分自身への挑戦!(そんなこと記念物でするな)
**大嫌いな日
年に一度、大嫌いな日は何の断りもなしにあたしの所へとやってくる。
目の前でコーヒーカップ片手に腹の立つ笑みを浮かべている男を睨みつけた。
「何ニヤニヤしてんのよっ!気色悪いわね!」
その笑顔の意味することが分かってしまっているあたしは思わず食べ終わったパフェの器に突っ込んでいたやたらに長いスプーンで肩をぴしぺしと殴りつける。だけど細い上に力なんて勿論あまり入れてないから、まったく効果はないのか目の前の男はいつものように、やれやれ、なんて呟いてあたしからスプーンを取り上げる。
「お前なあ…」
呆れたような物言いなのに、その目はどこまでも優しくて更に苛々してしまう。
「アンタ、ほんっと腹立つわね…。何だか胃までムカついてきたわ」
「……悪阻か?」
「ブン殴るわよ?!」
とんでもない言いがかりに拳を振り上げても、赤くなった顔は隠せないから意味はない。
「……あんまり騒ぐと迷惑になるだろうし、後は帰りに話そうぜ」
そう言ってあたしの手をとると、レジに向かって会計を済ませる。そしてそのまま暗い道を歩いていく。
「ちょ…っ!何なのよいきなり…」
あたしがどれだけ、この大嫌いな日に振り回されてると思ってるの。口から出かけた言葉を、喉の奥で留めた。どうせ忘れている相手に、そんなこと言ったって意味ないもの。
「……ハルヒ」
ふいに振り返って名前を呼ぶ声に俯いていた顔を上げれば、そこにあったのは殴り飛ばしてやりたくなるような笑顔。
「明日はどこか出掛けような」
「あ…当たり前でしょ……」
毎年毎年、明日のことを忘れたフリをして、最後の最後でそんな言葉があたしを嬉しくさせる。
「…………バカキョンッ」
年に一度の誕生日の前日。それは、あたしにとってはきっといつまでも大嫌いな日。
fin.