その人は問うた。
戦う今を、この寮に住まう今を、どう思うのかと。
「…苦しい、です」
あたたかなぬくもりが、想いが優しくて、どんな顔をしていいのかわからないのだ。
苦しい、苦しい。
そんな感情、知らない。
「まァ、今は辛抱してくれや」
シャドウとの戦闘になれば重い鈍器を振り回す無骨な手が、ぺちぺちと俺の頬を軽く叩いた。
このひとは、コロマルに向ける瞳を時々俺に向ける。
え、俺ってわんこ扱いですか?
「そんなんでも、いずれ時が経てば思い出に変わるモンだぜ」
ふ、と何気なく緩んだ表情に、ちょっとだけ驚いた。
やっぱり、このひと、いいひとなんだなあ。
「ありがとう、がっきー」
「その呼び方はやめろ」
ビシリ、と今度は鋭いデコピンをお見舞いされてしまった。