Silver Sorcerer
□想いの宿り主
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ひそひそ…
魔本封印と言いながら、魔本が復活してから何カ月が過ぎただろうか?
魔法貴族といえど、新米のガーディアンに任せているから被害が拡大しているのでは?
そういえば、魔本は持ち主を殺して手にした人間が、次の魔本の主になるんだそうだ。
なら、魔法貴族には気の毒だが、英雄ヴァイルダー様に再び戦っていただいた方が確実では?
そうだ、獣人を救うために動きだしたと言うし、また戦ってくださるのでは?
ひそひそ…
外の事に関心を失ってから何百年たっただろうか。
どの主に使われても、風の噂に耳を傾けることもなくなっていた。
だが、『魔本』の復活が、少しずつ自分の感覚を変えていく。
そして、今も。確実に。
『目覚めた時、暴れるようなら容赦なく拘束しろ』
さらりと銀髪の三編みが下に垂れさがり、暗闇で鈍く光る紫色の瞳が主の命令を思い出しながら、ナイフを手にとり、ベッドに横たわるシャリオンの首めがけてそれを振り下ろす。
「…誰かに殺されるくらいなら、俺が殺す」
刺さる寸前でビタリと止まったが、その瞳は眠るシャリオンを貫くほど強い意志を纏っていた。