REVENANT

□轗軻不遇
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「ではその様に……」

アリィ・ディフ・デュオン、煉・魔界王家直属に使える重臣、同じくレザルト・ディフ・ギルドレイ二人を総じて煉・魔二柱と呼ぶ。
各魔界によって呼び方すら違うものの皆戦闘に於いても、学門に於いても優秀そのものである。

「ったく面倒な事になったぜ」

ソファに腰を下ろしたまま吐き捨てるジルの向かいにはシバが優雅な仕草でワインを口に運んでいた。

「父上、んな呑気にしてる場合じゃねぇだろ?」
「焦ってもどうにもならん、落ち着けそれでは魔王としての役目は勤まらぬ」

コトン、とワイングラスが机に置かれて中の赤い液体を揺らめかす。

「っ……!でもアイツを他次元にやっていいのかよ?」
「まずはあの神無と言う娘を知る事も必要だろう、直ぐに解決する問題ではないのだからな」

つまりは元の王女セラの魂を見付けるまでの間、神無という別の存在を手元に置かなければならない。
だからと言って彼女の事を何も知らないまま置いておくのは危険な事態にまでなっているという事。

「あいつを逃がすかもしれねぇ」
「真・魔界の者だ、そこまで無能ではないだろう」
「……信用できねぇな」
「信用などせずでよい、利用しているだけだ」

ジルがワインを飲み干して、またグラスに赤い液体を注ぐ。勿論、ただのワインではない、人間の血液が入ったワイン。
それをまた一口飲み下して深く息を吐く。

「チッ!今は仕方ねぇ」

いくら親子でも大魔王の決定に魔王は逆らえない。
それでも反論したのは妹の軆を空間を越えた場所に送るのがジルにとって不服であったから。

そしてセラの軆を持つ神無が送られるその場所は……

「ロストワールド、そこに暫く預ける。それでいいな?」

シバの問いにジルは静かに頷いた。




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