REVENANT

□跼天蹐地
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見慣れた家具、見慣れた窓、見慣れた月あまりに長い時間この部屋に存在している所為だろうか、それとも感情を閉ざしてしまったからだろうか、何も感じない、思わない。

あの魔人達の事以外は―

もうこんな感情不必要なのに……
それでも強くなり続ける、意識に反して胸は痛み続ける。
こんな事なら人間でいた方がどれだけ楽であっただろうか?そんな風に思ってしまう。人間の永遠の望み不老の體を手にいれた。
だがその代償は大きい、自由と心と魂。
あの三人の魔人が探している元の魂の持ち主が見付かれば死ぬ。
魂を抜き取られるとはどんな感覚だろうか、この體に入った時と同じようにほんの一瞬で何も感じなくなるのだろうか?それならば以外に死とは辛くないかもしれない。
魔界に来てからの長い時間そんなことばかり考えている。長い時間と言ってもきっと魔族達からすればほんの僅な時間でしかないだろう、霊獸達によれば魔界時間で35日目、人間の時間にすると約140日だと言う。もう4ヶ月以上絶っていることになる人間、朝霧神無が死去した日から。
きっともう二度と戻ることのない人間としての日々、家族に対する劣等感も友達とふざけて遊んだ楽しい気持ちも恋人と過ごしていた甘い時も、今考えれば以外に楽しかったのかもしれない。例え酷く当たられていたとしてもやっぱり唯一無二の家族だった。
無くして初めて家族という存在を恋しいと想う。
きっと家族には理不尽かもしれないけど今更だけど、温もりをくれていた事に感謝した。
今、人間にもどってもきっとあの時のように家族といがみあう事も友とふさがけて笑う事も、

―もう出来ない

心が死んでしまったのだから感じる事が出来ない。
これでいい、心を生かしていてはこの瞬間さえも憎く思ってしまうだろう、苦しくて泣き崩れてしまうだろうから。

神無という人格は、きっとこの状況に応じて心を閉ざしたのだろうから。
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