其他
□sadist
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ガチャンッ
派手な音を立て、花瓶が割れ花と水があたりに飛び散った
脚がすくんで動かず、大量の水が脚を濡らす
散らばった欠片を拾い集めることも、脚にかかった水を拭き取ることも出来ず、ただただ一点を見つめる
目線の先には、みくる先輩と唇を合わせている恋人の姿
暫くして、ようやく顔がはなれると先程音をたてた私へと目線を運ばせた
目が合うとみくる先輩には分からないぐらいにニヤリと妖しい笑顔を浮かべた
一樹の腕の中にいるみくる先輩は、ほんのりと頬が紅く潤んだ瞳が、女の私から見てもとても魅惑的で、ただただ片手の掌を握りしめるしかなかった
「あっ、あのっ、古泉くん…!」
「どうしました?」
「何で、キ、ス…したんですか?」
「そうですねぇ"なんとなく"でしょうか、少し反応を見てみたい子がいたものですから」
いつもの胡散臭さ溢れる笑顔を作り、目線は私にとどめたままそう言ってのけると、みくる先輩を腕の中から開放した
「予想以上の反応が見えたので、もういいです。朝比奈さん、ご協力ありがとうございました」
一樹の腕から逃れたみくる先輩は、私の前までくると勢いよく頭を下げた
「本当に、本当に、すいませんでした…!わっ私、」
みくる先輩は、ひたすら頭を下げ何かを謝っているようだが、私の耳には届いていない
目の前にいるみくる先輩より、数歩離れたところにいる男を睨みつけることしか今は出来なかった
「あっあのっ、古泉くんとは、キッ…キスしてませんから!」
最後にみくる先輩が放った一言は、漸く耳に届いたようで安心したのか、膝から床に座り込んだ
みくる先輩は早足で部室を去ると、胡散臭い笑顔の男が歩み寄る
「……ど、ゆこと、?」
「朝比奈さんが言ったままですよ。僕は朝比奈さんとキスはしていません。少し、顔を近づけ、しているように見せただけです」
「な、んで…?」
「あなたの反応が見てみたかったんですよ」
「…………最低」
「すいません、ちょっとした冗談のつもりだったのですが、やりすぎましたね…、反省しています」
いつの間にか溢れ出した涙が頬を伝い、床に小さな水滴を落とす
一樹は親指で涙をふき取りながら、ゆっくりと温かい体温で身体を包み込んだ
「あなたを見てると、苛めたくなってしまうんです」
「…………最低」
「好きな子程、苛めたくなると言うでしょう?」
髪を撫でる仕草がやけに心地よく、一樹の服をぎゅっと握った
「あなたは本当に、可愛い人ですね」
いきすぎた意地悪