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□distress 3
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(ランディ様も、オスカー様も一応私を認めてくださっているのね…)

エンジュはそんなことを考えながら中庭を歩いていた。
良く晴れた青空が清々しい。
大理石でできた柱は表面にうっすら自分の姿が映るほどに滑らかだ。
照りつける太陽の日差しは柔らかく温かいが、眩しくてくらくらする。

そんな折、一瞬目の前を何かが横切った。
エンジュは何が何だかわからず、今通り過ぎたその銀色の発行体を目で追う。
するとどこからか声が聞こえた。


「おい、そこのお前」


びっくりして声の主を探すと銀髪で色黒の少年が走ってきた。


「なんだ、お前か。今のやつ捕まえっからよ、協力しろ!」

「どうしたんですか、ゼフェル様」

「改良したメカが暴走しやがったんだ」

「ええーー、放っておいて大丈夫なんですか?」

「だから今から捕まえんだよ!」


そう言うとゼフェルはエンジュの手を引いて走り出した。
中庭を飛び回る銀色の発光体めがけてずんずん進む。


「ゼフェル様、ちょっと痛いです。」

思いの外強く手首をつかまれて引っ張られたエンジュはよろけそうになった。
ゼフェルはメカ捕獲のことで頭がいっぱいなのか聞こえていないようだ。
そのまま銀色の発行体に近づいていく。


「お、いけそうじゃねーか。お前は裏に回れ。挟み撃ちにすっから!」

「わかりました。」

「いいか、お前が先に後ろから攻撃しろ。逃げたところを俺が捕まえる。」

「攻撃?そんなことして大丈夫なんですか?」

「死にゃしねーだろ。とりあえず突っ込め」

「いやいや、爆発とか…」

「ああ、今んとこそういうのはねーから気にすんな。」

「わかりました…とりあえずアタックすればいいんですね?」


そう言ってエンジュはヒュンヒュン飛び回るメカの後ろに回り込む。
メカの動きが速すぎて目がなかなか追いつかない。
でも、やるしかないのだ。
タイミングを合わせて…今だ!!

ゼフェルが目で合図したと同時にエンジュは中庭の植木鉢に足をかけ、反動でバレーボールのアタックのように空中に飛び上がり、そのまま例の物体を両手で叩き落とした。

見事ヒットして落ちてきたそれを逃さずゼフェルがキャッチする。


「やったぜ!エンジュ、お前サイコーな!!」

「は、はあ…」

ゼフェルは満足そうに言うと、エンジュに
駆け寄る。


「なんとかやりましたね。」

「ああ、普通の女じゃこうはいかねえ。おまえに頼んで正解だったぜ。」

ゼフェルは嬉しそうだ。
自分でもなかなかこの手のメカは捕まらないのだという。


「はあ…それより、そのメカ一体何なんですか?」

「これか?ほらよ」

そう言ってゼフェルは閉じていた両手を少し開いて見せた。
中身はまだ少し痙攣を起こしたようにビクビクと動いている。


「メカチュピ!!」

ゼフェルの手の中には銀色のボディをした小さな鳥のようなものが収まっていた。
発光していたのではなく、銀のボディに日の光があたって反射していたようだ。

メカチュピ…。
過去マルセル様を悩ませたというメカの鳥がなぜここに?

「久し振りに新しい部品が入ったからこいつで試してたんだよ。そしたらいつの間にかどっか飛んでっちまってよ、中庭で見かけたっつーから来てみたらこうなってたわけだ。」


なんてお騒がせなゼフェル様…
まあでも、それも日常茶飯事なのであった。



「それにしてもお前、本当すげえな。次何かあったら頼むぜ。」

「はあ?私は便利屋じゃないですけど。」

「今度恩返ししてやるから待ってろよ!」



聞いてない…

そう言ってゼフェルはメカチュピなるものを持って去って行った。



「はあ、これってゼフェル様に認められたってこと?」

妙なことで何となく疲労したエンジュはよろよろと中庭を歩いて出て行った。






































To be continued…

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