君がいるだけで(Main)
□始まりの場所
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見知らぬ男がクラスに現れたのは、
終礼のチャイムが鳴ってすぐのこと。
日直当番で黒板を消している水色に声を掛けている。
そいつは同性の俺が見ても”かっこいい”と言っていいと思う。
濃くもなく薄くもない顔立ち。
制服の上からでもわかる、引き締まった身体つき。
かっこつけてないところがまたかっこ良かったりして。
・・・あ。
女子が騒ぎ出した。
「ねぇねぇ、あの人大人っぽくない?」
「3年じゃないの〜?」
女子の言うとおり3年だとしたら、
なるほど、
俺たちよりも大人びた雰囲気にも納得。
それにしてもその”かっこいい先輩”は、
なんの為にここに来たんだ?
今の時期の3年は、就活や試験に向けてそれぞれ時間を使っている。
学校に登校してくるのなんか、補修や進路相談くらいのはずだ。
そんな時期にわざわざ1年の教室に来るような用事なんて・・・。
「井上さん、お客さんだよ。」
黒板を消していた水色が呼んだのは、鼻歌を歌いながらたつきの横で帰り支度をしていた井上だった。
クラスの視線が井上に集まる。
当の本人井上はと言うと、
「ほぇ?」
・・・・・・知らねぇのか。
「高原先輩。」
声の主は、井上の隣にいる俺の幼なじみ、
有沢たつきだった。