君がいるだけで(Main)

□夢のまた夢
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「ねえねえ、黒崎君て朽木さんと付き合ってんの?」
「すっごく仲いいよね〜!」
「は?・・・・・。」
(またかよ・・・・。)


何回目か数えるのも面倒になってきた。
確かに俺はルキアといる時間か多い。
けどそれだけでこんなに同じ質問をされるとは・・・。


(女ってのはなんでこんなに誰かと誰かをくっつけたがるんだ?)


俺のため息は深く・・・重い。
だってそうだろ?
こんな噂話、
井上の耳にでも入ったらどうなることか。
マジ勘弁してほしいぜ。



井上とは・・・なんでか緊張しちまってあんまりまともに話ができない。
いっつも“おう”とか“ああ”とかで終わっちまう。
なんでルキアみたいに普通に話せないんだろうか・・・って、
そんな事わかりきってる。



それは俺が・・・井上を特別だって認識してるからだ。



実際井上以外の女とは普通に話せるし。
井上に話しかけられる度いつも、
俺の心臓が飛び跳ねる。


もしももう少しまともに井上と話せてて、
自分に自信のある男だったら。
こんな風に考えなくてもよかったのかもしれない。



いっそのこと、
ルキアが井上みたいなやつだったら。
もっと近づけたのか?
クラスメイトじゃない距離まで・・・行けたのか?


・・・くだらねえ。
ほんっとにくだらねえ。


俺に話しかけてきた女子が、
未だに俺をチラチラ見ながらキャッキャ話す様が、
どうにも無性に腹が立った・・・。



〜〜〜夢のまた夢〜〜〜



「おに〜〜ちゃん!!おに〜ちゃんてばっっ!遅刻だよ〜〜っっ!!」
「もうほっときなよ遊子(夜またアレに行ってたみたいだし)。あたしたちも出ないと遅刻だよ。」
「んもぅ。お父さんが急患でお兄ちゃん起こしてくれないと、朝ごはんも一緒に食べないんだから。」


階下に妹たちの声を聞いて、
俺は浅い眠りから覚醒し始めた・・・・・。


遅刻・・・・?ちこ・・・


「遅刻!!?」


体をガバッッと起こして、
机にある目覚ましを見たら。


「うっわっっ!!遅刻ギリギリだっ!」


朝飯を食ってる時間もない。
顔洗って制服着たら速攻出ないと間に合わない!!
そうだ・・・昨日、
どうしても今朝早くに診てもらいたいって患者さんがいて、
いつもみたいに親父に蹴り起こされなくて済むと思って・・・。
油断しすぎた〜〜!!


「おいルキア!お前まで俺と同じ風にのんびり寝てんじゃねえよ!!」


それに答える様に中からガタンと物音がした。
ルキアの居場所は押入れ。
・・・俺がルキアを起こすって。
これがそもそもおかしいことだ。
ルキアはいつも俺より早く起きて支度してる。
起こされるとしたら俺の方なのに。


なんて考えは頭の隅に追いやる。
今はそんな余裕もないんだから。
パジャマを脱ぎ棄ててワイシャツを掴む。


「ルキア!いい加減にしろ!マジで遅刻するぞ!!」


上半身裸のままで押入れを開けた。
もうルキアは起きていて、
そこで魂が抜けたみたいにボケっとしている・・・。


「ルキア・・・?」


シャツを着る事も忘れ、
俺はルキアの顔を覗き込んだ。
一瞬ルキアと目が合って、
それから。


「ひっ・・・・きゃあぁぁぁぁっっ!!!」
「っ!!」


叫んだルキアが俺の鼻っ面で押入れを閉め、
俺はそのでかすぎる叫び声に耳をやられた。
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