LOVE
□『long muffler』
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long muffler 〜20000Hit ss
優しい香りに包み込まれていた。
それは、とても温かく心地よくて。
だから、もう少し、このまま。
そう思っていたのに。
つきあげる愛おしさに、その正体を捕まえようと手を伸ばしたら
不意に魔法が解けて。
手に触れた温もりが消えうせて、
突然、周囲の気温が下がったように感じて・・・・・・・
身震いして、目が覚めた。
突っ伏していた机から顔を上げると、壁に掛かった時計は午後7時を回っている。
この自習室には窓がないので外の様子を窺うべくもないが、一年で一番日が短いこの季節、もう周囲は真っ暗だろう。
図書室に調べ物に行った光を待ちつつ、一人で仕事をしているうちに、珍しくうたた寝してしまったらしい。
痺れた腕を伸ばしつつ身を起こすと、椅子の背もたれと自分の腰の間に何かが挟まっているのに気付いた。
振り向いてみると、見覚えのある長い手編みのマフラーだ。
・・・・・これは、彼女の?
居眠りしている俺に、彼女が掛けてくれたらしい。
先ほど急に寒さを感じたのは、身動きしたときにこのマフラーが身体から滑り落ちてしまったからだろう。