大切な時間(1000hit記念フリー小説)





「みんな、お昼にしましょ」




よく晴れた午後。
12月にしては暖かい陽気で、心地よい日差しがふりそそいでいる。



ここは『学園の楽園』と呼ばれるSA専用の温室。
香り高き紅茶とマフィンの香り。
SAの7人で毎日かかさずに設けているティータイム。




私がもっとも愛するもののひとつ。




「うまそーだな」



『明ちゃん おいしそうだね』



「今日のメインはミラノ風サンドイッチよ。それとお茶はダージリン、そしてオレンジピールを入れて焼き上げた新作のスコーンよ」







「明〜菓子くれー」





そう。私にとってこの世で一番大切な時間なの。





時刻はちょうど12時半を回った所だった。
いつもこの時間はティータイム兼、ランチタイムの時間。





至福のひととき。





「あれ?彗と光は?」



「そういえばさっきから見てねぇな」



「困ったわね・・・もうお昼ご飯なのに。あんた探して来なさい。さもなくば今日のおやつは抜きよ」



「何でそーなる!!きっとあいつらの事だからさ、ふたりきりになりたくっ」



ゴッ



「おだまりっ!私達探してくるから、竜達は先に食べててちょーだい」



「う〜・・・後で絶対くれよな・・・」



「・・・わ、悪いな・・・」



「いってらっしゃい」



『いってらっしゃい』



************



「明ぁ〜。腹へったー」



「いいから、さっさと探しなさい」



光は授業に出ていて遅い時もあるからともかく・・・彗までいないなんて、また何か企んでるんじゃないでしょうね。



「いねーなぁ。思い当たるとこはほとんど探したぞー」



まさかまた、無断で校外に連れ出したのかしら。
あの校外学習とかいうふざけた名目で・・・!!
彗のヤツ・・・!!



「あっちも一応探してみるか」



「あ、ちょっとどこに行くのよ」



「んー?校舎の裏ー!」



************



「あ」



「お!いたな」



やっと見つけたわ・・・やっぱり彗といたのね。
こんな人気のない校舎の裏でふたりきりなんて・・・かわいいエンゼル光が危険にさらされちゃうじゃない!



それにしても・・・何してるのかしら?



「あいつら・・・芝生に座り込んで・・・寒いのに何やってんだ?」



光が彗に何か渡してる・・・?
目をこらしてよく見ると、光は何か手に持っていて・・・どうやら光のお手製のお弁当のようね。



正直、光の料理の腕前はあまり上手じゃないわ。
手つきも危なっかしくてはらはらしてしまうほど。



でもお米さえ形をとどめていなかった『砲丸おにぎり』から、あ、『砲丸おにぎり』って宙のバカが命名したのよ!
・・とにかくお米の形をとどめている、見た目は普通のおにぎりが作れるようになった時はほっとしたわ。



彗が光お手製のお弁当の包みを開けると、色とりどりのおかずらしきものが見えて・・・光なりに頑張っておかずも作ったようね。
いつもはおにぎりだけだったから、たぶん今日初めて成功したんだわ。



離れていても分かるくらいに、彗から薔薇色オーラが漂ってきて・・・ムカつくわね。


腹が立つわ・・・!!





でも





「なあ。腹へったし、早く帰ろうぜ。こっから叫べば聞こえんだろ」



「・・・待って」



「おー」



バキッ



「痛え!!なっ・・・急に何すんだよ明」



「静かにおし。・・・行くわよ」



「え、いいのか?」



「・・・」



「明?」



「うるさいわねっ・・・いいの」



「いいのか?」



「・・・今日だけ特別よ・・・!!」



仕方ないから見逃してあげるわ。




だって




大切な人と過ごすひとときはとても幸せだから。



その証拠に・・・光はまぶしいばかりの笑顔なんですもの。
光が笑っているなら私は幸せ。
彗だってそうでしょ?


そしてそれで彗も幸せなら・・・それでいいのよ。
も、もちろんほんの少しそう思っただけよ・・・!



光は私達共通の宝物だから。
光の笑顔は私がもっとも愛するものなの。




きっと今私達は同じ気持ちね。





けど・・・本当はまだ少し悔しいわ。



私と光が仲良しな事は、昔からそしてこれから先も変わりはないけど。
光の中であいつの占める割合が増えた筈だから・・・そんな事を考えたら、何だか寂しくなってきたわ。



なんて頭の中で考えていたから、気が付いたら



「なっ何よ!」



宙に至近距離でじーっと顔を覗き込まれていて・・・急にそんなに近くにいたら驚くじゃないのっ〃



「どーした」



「え?」



「急に黙り込むからさ」



「何でもないわ」



「そっか!」


でもこの笑顔も・・・



いつの間にか、私がもっとも愛するもののひとつになっていたの。



「それよりさー早く菓子くれよー」



バキッ



「バカ!ちょっとお待ちっ!お昼が先でしょ」



「痛てーぇわかったよー」



そうよ。
こんなやりとりさえも・・・幸せが生まれる瞬間なの。




それは




この世で一番大切な時間・・・なのかもしれないわね。



fin
************



大切な時間(1000hit記念フリー小説)いかがでしたか??


サイト1000hitを記念して初のフリー小説です!!
お持ち帰り自由です。コピーしてお持ち帰り下さい。

そして初の明目線で書いてみました。
そのうち明×宙も書いてみたいです。

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持ち帰る時に、一言ご報告頂けると嬉しいです。


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