月夜(3000hit記念フリー小説)





「光っ!!」



「滝島っ」



「たっ滝島さん・・・まさか」



「彼女は俺の妻です。
嫌がる女性に無理矢理そういう事をなさるのは、男として情けないですよ」



「あっあのっ・・・光さんが滝島さんの奥様だとは知らなくって・・・!!」



「光さん・・・?
俺の妻を馴れ馴れしく呼ばないで頂けますか。場合によってはあなたの会社との取引も考えさせて頂きましょうか」



「そっそれだけはっ」



「それならさっさとどこかに行って頂けると有り難いのですが」



「しっ失礼しましたっ」



命知らずな男は慌てて立ち去った。



「ありがとな!どうしたもんかと困ってたから助かったぞ」



「何やってるんですかっあなたはっ・・・!!」



「なっ・・・あんまり大声でわめくなよ!だって・・・仕方ないだろ?
やけにしつこい奴でな。でも・・・さすがに暴れたらマズいと思ったんだ。おじさんや滝島に迷惑がかかると思ってな・・・」






今日は滝島家の創立記念パーティー。
もちろん俺の妻である光も、滝島夫人としてパーティーに参加していました。



「まかせろ!立派に挨拶して見せるし大人しくしているぞ」



なんて光は意気込んでいましたが、若くてまだ何も知らない頭の軽そうな資産家の令息達がいっぱい参加していましたから不安だったんです。


思っていたとおり、一通り挨拶を済ませてしまった光は変な輩に捕まってしまったようです。






明と八尋と桜は会社の繋がりで参加すると聞いていたので、万が一の対策として、明に光のガードを頼んでいたのですが、会場には見当たりませんし遅れているようですね。


桜や八尋も挨拶で忙しい様子なので・・・光をひとりにしておくのがとても心配でした。



俺は会社の代表として挨拶回りや社交辞令程度の会話は必須で、ちょっと目を離した隙に、光をうっかり見失ってしまった訳ですが・・・そんな時



「いいのかい、彗君。
僕も忙しくって助けられなかったんだけど、さっき光ちゃんどっかの子息に引っ張って連れて行かれたよ、クスッ」



なんて耳打ちされおまけに桜に



「あら大変。
光は鈍いからくどかれまくっても気付かなくて、痺れを切らした相手にせまられちゃうかもよ、彗クン!」



なんてとどめをさされ、重役達に話は押し付けて急いで光を探し回った訳です。
まさかバルコニーに連れ出されていたとは。






また八尋に借りができてしまいましたね。
生きているうちに返せるといいのですが。
返しても返しても、また作るハメになりますね。
何だか一生借りを返せない気までしてきましたよ・・・。






「大体光は初対面の方に対して気を抜きすぎです。
男なんて何を考えているかわからないんですから!
っと警戒しろと何度言えばわかって頂けるんですかっ。心配させないで下さいっ・・・」



「・・・心配かけてすまん」



俺の妻にちょっかいを出すなんて・・・将来をわざわざ棒に振るような行為をなさるなんて見上げた根性ですね。
しかも光の肩を抱いたあげくちゃっかり腰にまで手を回すとは・・・フハハハハ



「怖い顔するな。まぁ済んだ事だ。もう怒るなよ」



どうやら光はトラブルを引き寄せたり嵐を巻き起こす体質らしい。
さらに持ち前の恐ろしく激しい鈍さ。
俺自身、奈落の底に何度突き落とされた事か。


悪気がないからこそ余計に、振り回される。
思い返せばキリがない。





でもそれは、光が誰よりも純粋で強くて優しいからこそ起こる訳で。


俺は何度彼女の強さや優しさに救われ、憧れただろう。おそらく他の人達も。


光は周りを照らす太陽みたいで。


だからいつも光に寄ってくる人間は絶えないのだろう。
外見上の美しさだけでなく、それ以上に光自身が光を放って輝いていてまぶしい。


それなら俺は決してひとりでは輝けない月のようで。



「光は無防備すぎです・・・」



「すまん・・・」



光は悪くない。
光自身嫌な想いをした筈で、光ならあの程度の男なら一発でのしてしまえただろうけれど。
俺や父や会社の事を考えて我慢してくれたのだから。


それなのに俺はいつまでも嫉妬していて、機嫌も悪いまま。
光に対して腹を立てるなんて情けない。
自己嫌悪に陥る。


もっともっと強くならなければ。光に嫌な想いをさせないためにも。
でもどんなに焦ろうとも努力しようとも、そんな簡単に強くはなれない。


それに・・・光は誰にでも平等で愛にあふれているから、俺は本当は必要ないのかもしれない。
俺だけがこんなにも光を必要としているだけで。


好きの重さが違いすぎるのかもしれない。
なんて常に弱気と隣り合わせな自分が情けない。



好きすぎて光に関する事は上手くこなせないし割り切れなくなってしまう。
まるで子供みたいですね。





でもそれでも側にいたい。
光の隣は誰にも譲れない場所だから、あの日からずっと隣にいるし、もちろんこれからもいるつもりだ。



「あのな・・・これからはもっと気を付けるぞ。
心配かけて悪かった」



こんな事を言わせてしまうなんて、本当に俺はダメな男ですね。



「いえ・・・俺こそすみせんでした。光は悪くないのに怒鳴ったりして。俺こそ気を付けますね」



「・・・今日みたいな事があっても、お前はお前らしく、私が無茶しないように・・・私の側にいて欲しいんだ。
ダメな時は怒ってほしいし、怒鳴っていいから。・・・だからそんな顔するな」



落ち込んでいたのに気付かれていたんですね。
おそらく理由には気付いていないんでしょうけど。
なんたって鈍いですからね。



「・・・わかりました」



「笑ったな」



「・・・まったくあなたにはかないませんよ」



「それにしても・・・今夜は月がキレイだな」



「そうですね」



丸く満ちた月は淡く明るい光を放っている。



「月ってあんなにキレイだけど、太陽がなければ輝けないんだよな」



「・・・太陽のおかげて輝いていられるんです」



「滝島って・・・月みたいだ」



「・・・そうですか?」



まるでさっき想っていた事を読まれていたようで思わず苦笑する。



「だって・・・月ってキレイで柔らかい感じで・・・。
見守ってくれているかのような優しい光を放ってるだろ?」



いつも光は鈍いようで



「まるでお前みたいじゃないか」



俺の心に響く事を唐突に言う。



「光・・・」



「月みたいに・・・お前もいつも私を優しく見守ってくれてるだろ?」



それならば



「滝島もいつも私を見守っていてくれよなっ」



「・・・はい」



いつまでも俺は



「光」



「何だ」



「キス・・・してもイイですか?」



「・・・おう」



「愛しています」




光を優しく照らす月でありたい。







fin
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結婚した後の彗と光です。
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