恥知らずな妄想。
□手紙。
1ページ/2ページ
柳君へ
お久しぶりです。最後に会ったのはあの夏の日以来でしょうか。
こうして君に手紙を書くのは久しぶりなので少し緊張してしまいます。
昔はよくこうして手紙を交換していましたね。一方的に私が悩みを相談していただけですが。
今は研修医として働いています。まだ2年目だから何かと慣れないこともありますが、どうにか頑張っています。
でも、最近全く身体を動かしていないので、身体が鈍ってしまって。
皆とテニスをしていた頃が懐かしいです。
時間が取れたら、またあそこのコートに行きませんか?
柳君は今も真田君の道場で剣道をされているのですか?
真田君は師範代として活躍していることでしょうね。
たまに幸村君も顔を見せると言っていましたが、あなた方三人が集まると、お弟子さん達が後込みしてしまうのではないですか?
…失礼。
さて、この度住居を移転しましたのでお知らせしておきます。
以前の家も気に入っていたのですが、やはり二人で暮らすには狭すぎたので…。
そうですね、ここまで書けば察しのいい君は分かってしまいますよね。
今、仁王君と一緒に住んでいます。君が昔言ったとおり、私達はそういう関係なのです。
ずっと黙っていてすみませんでした。軽蔑するならして下さい。
でも、私達は至って真剣なのです。私は、誰よりも仁王君を愛しています。
君が、切原君を愛しているように。
それでは、君からの返事があることを祈っています。
柳生比呂士
「もしもし、ああ、そうだ久しぶりだな。手紙を読んだ。ああ、分かっている。だから、妙な手紙を寄こすなと言っておいてくれ。よろしく頼む。じゃあな」
「ぷり?」
「柳君からです」
「ぷり」
「仁王君、柳君へはあなたが移転の案内を出したんですよね」
「ぷりっ」
「私の名前で?」
「ぴよ」
「どんな内容を?」
「…ぷり」
「冗談は休み休み言いたまえ!大体君が以前の私の家に入り浸るから仕方なく引越しをしたんでしょう!これはただの同居と言うんです!」
「ぷりっ!」
「誰と誰が恋人同士ですか!」
「ぷぴょ」
「名前で呼ぶのはやめたまえ!大体、あなたは何時も…」
柳は仁王からの手紙を読み返し、机の引き出しに仕舞う。
「やはり、詐欺師には敵わないな」
そう呟いた彼の机には、赤目の彼の写真が飾られていた。
end
次頁→あとがき。