文
□仲良し.他
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野球ができれば、学校なんてどうでもよかった。
一日中野球をして、甲子園に行ければ、後はどうなってもよかった。
なのに、その夢も、お前なしじゃ叶わない。
そう言う鷹見君を見て、俺はなんて声をかけたら良いかわからなくなった。
でも
でもね
今だけ、俺のこと、頼って?
「鷹見君、いっぱいため込んでたんだね…」
いいよ、いっぱい愚痴ってよ。
俺でよければなんでも聞くよ。
「チビの体じゃなくてよぉ、自分の…‘鷹見与作’の体で、いきたかった」
ねぇ、鷹見君。
今のいきたかったは、
‘生きたかった’?
‘行きたかった’?
どっちなのかな?
それとも…両方?
ポツリポツリと語る鷹見君は、せきとめていた何かがなくなったかのように、ポロポロ涙を流しはじめた。
綺麗な涙。
鷹見君も俺と同い年だもんね。
やりたいことも沢山あったよね。
…主に野球の事だろうけど。
「鷹見くん、いっぱい泣いていいよ」
ぜーんぶ俺が受け止めてあげるから。
そう言うと鷹見くんは、バカが…と呟いてそっぽを向いてしまった。
願わくばこの綺麗な人が涙を流すことがありませんように。
俺はそっと願うのであった。
END
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