novel―Dグレ
□桜の木の下で 最終話
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桜の木の下で
最終和『桜の木の下で・・・』
バン!
突然、ドアが勢いよく開かれた。
「何してるんですか?!」
「蝋花・・・」
蝋花は走って来たのか、肩で息をしている。
心なしか髪も乱れている気がする。
「ウォーカーさん、行っちゃうんですよ!」
もう知っているのね・・・ということは、アレンくんはもう学校を出てしまったの?
もう空港に向かっているの?
「分かってるわよ・・・」
私はなんとも言えない気持ちで投げやりな言葉を発してしまった。
ごめんね、蝋花。
「分かってるって・・・じゃあ!」
彼女は右手を強く握りしめた。
「じゃあなんで!」
「そんな、泣きそうな顔してるんですか・・・?!」
「っ!」
ウソ・・・私、そんな顔を・・・?
「行ってください・・・まだ間に合います」
蝋花はフッと先ほどの勢いを殺して柔らかく言った。
「でも・・・私、笑う自信がない。
アレンくんの前で笑顔になんかなれない・・・!」
そうよ!
私はそんなにできた人間じゃないの!
笑顔でお別れなんて、できない・・・!
「笑わなくても、いいじゃないですか」
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