黄金の賢者の呪
□educate ending
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目指していた高校に入学し、クラスにも馴染み毎日楽しい生活が駆け巡る。
だが、それとは裏腹にエドワードは『少し前に戻りたい』と、暇な時によく思うようになっていた。
【educate ending】
「………面白くないな…」
毎日出される宿題に飽き、エドは教科書の上にシャープペンを転がして体を椅子の背もたれに預けた。
わからないわけではなく、寧ろエドにとっては簡単に思えた。
だが、あることに頭はいっぱいでやる気が拡散してしまうのだ。
(………まだ、やってんのかな)
エドはもっと椅子に体重をかけて首をのけ反らし、ベッドの方を見る。
壁を1枚隔てた向こうは弟のアルフォンスの部屋には今、彼の他にもう1人存在していた。
エドと、今年からアルも教えることになった家庭教師のロイが。
「…もっと難しい問題だったら、質問しに行けんのに…」
会って、話して、触れる口実が欲しかったが何も見つからない。
受験直前の時は勉強しながらだが毎日のように一緒にいれたのだが、今は週に2回だけ。
兄と同じ高校へ行きたいと言った弟はエドより努力を要する為に、ロイもそちらへつくことが多いのだ。
(確かにアルの日に姿は見るし、少しは喋るけど……やっぱり、そういうのじゃなくて…)
恋人としての2人きりの時間を満喫したい。
特に躰は最近ご無沙汰でたまの夜に疼き、壁越しの彼を思いながら性欲処理を行うことすらある。
心の方も、無性に苛立ったり、突然何かに沈んでしまったりと情緒が乱れる。
(もっと構ってよ……)
逆さまの世界で、彼に向けて手を伸ばした。
。
「…何をしているんだね。背伸びにしては反り過ぎではないか?」
「?!ロイせんせ……っゎわわ!?」
突然聞こえた声にエドは勢いよく反応して自分の部屋の入口を見たが、その反動でバランスを崩す。
どうにか立て直そうとするが余計に体重が傾き、椅子ごと崩れ落ちそうになる。
が、エドは一瞬斜めのまま止まり、そのまま元に戻された。
「…はぁ…全く君は………心臓が跳ね上がったじゃないか…」
本当に安心したように溜息を吐くロイ。
それこそ鼓動の音が聞こえるのではと思うくらい。
「な…だっていきなり入ってきたから…ノックくら」
「したよ?だが気付かなかったんだ」
見られていたことを知って、エドは顔を赤くした。
それを隠す為に顔を背ければロイが頭上でクスクスと笑う。
「…で、何だよ…//」
促すと思い出したようにロイは帰る前に挨拶、と言って反対を向いているエドの顔に手を添えて自分の方を向かせた。
――チュッ
「…おやすみ」
唇同士を重ね、短く言葉を囁いた。
石化しているエドの頬にもう1度キスして、ロイは部屋を後にした。
扉が閉まる音と同時にエドはそっちを見ながら机の上の教科書に頭をゆっくり倒した。
(……こーやって……餌をちらつかせて……飢えを育てるんだ…//)
頬の熱は全身に散りばめられ、瞳は酔ったかのようにとろんとした。