崩壊

□捕食者
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−あぁ、又今日も来た。確か昨日も顔を見たな、十一番隊はそんなに暇なのか?−


阿近は深い溜息を吐き出す

此処最近悩みの種に振り回される自分自身

人の仕事場にも関わらず寛ぎ酒を煽りながら邪魔しに来る男に向かって。






−捕食者−









先程から一言も言葉を発っしず酒を飲み続けている、この男に阿近は心底参っていた。

何しろ暇あれば来るもんだから此処まで来るのに顔パスで入って来るし構えとばかりに話しかけてくる、まさにウザイの一言だ

しかし最近はそれに慣れつつある自分が居る、と複雑な心境で黙りこむ一角を見た。

手に持つ酒瓶を揺らし残り少ない酒をそのまま一気に飲み干したかと思えば空になった瓶を床に転がし直ぐ二本目へと手を伸ばす
横目で成りを見ていた阿近は呆れて溜息しか出てこない

暫しの沈黙、先に口を開いたのは一角だ


「……阿近…」
「何スか」

ふと、頬をうっすら朱色に染め焦点の合わない瞳で阿近を熱っぽく見つめるその様は完全に酔っ払いにしか見えない。
酒に強い筈の一角が此処まで酔うのは珍しく余程嫌な事があったのだろうか、それを考えると邪険に出来ず律儀に返事を返してやる。

「お前も飲め」
「仕事中なんで遠慮しておきます」
「相変わらず固ぇな、誰も見てやしねぇんだからバレねぇって」
「…付き合いきれない、って意味スよ」

そう言いキッパリと申し出を断った、しかし酒癖の悪い一角に付き合うのが面倒臭いと言うのは建前で本当は違う

理由は………別にあるのだ。

「つれねェ事言うなよ」
「他に暇な人でも誘えば良いでしょうが…俺は見ての通り忙しいんで」
「嘘つけ、本当はそんなに忙しい訳でも無ぇんだろ?知ってんだぜ」
「何言って…「お前が俺から逃げんのは今日だけの事じゃねぇだろ」



鋭い視線が阿近を射る


怒っている訳でも無く


悲しんでいる訳でも無い


ただ、寂しそうな表情で阿近を見据える




時折見せるその表情が何よりも苦手だった。




「…なら、どうして」




口を出た言葉に自分自身驚く、



分からない



決まって非番の日は此処へ来る理由



飲む酒は自らの好みの物ばかり



まるで謀られた様に現れ、くだらない話しをしては帰って行く




いつからだろう


触れる指が


自らを見る視線が


恐いと感じる様になったのは


邪魔な悩みの種、そうだった筈なのに…沸き上がる感情に戸惑いを覚えた。



逃げて


ごまかして



今まで、ずっと。



答えより早く一角は立ち上がり阿近の腰を持ち上げるとそのまま側の机へと押し倒す、抵抗などする暇も無く両手を張り付けられ背筋が栗立つのを感じた

積み重なっていた資料が音をたて床に散らばる。

「教えてやろうか?その代わり…知ったらお前は俺から逃げられなくなる」
「…っ…離せ…」
「俺を見ろ」

大人しくしなければ何をされるか分かったもんじゃない、言われるままに視線を向ける
まるで獣の様だと思った、鋭い眼光に見据えられるだけで体が強張り叫ぶ事も間々ならない。

切羽詰まった様に荒々しく袴に手をかける、直ぐに膝下まで下ろされ何をされるか瞬時に理解した。

「なっ…止め、ろ!離せ…」
「うるせぇな、怪我したくなかったら大人しくしてろよ」

抵抗する唇へ噛み付く様にキスされた、一瞬何をされたか分からず瞳を大きく見開き息継ぎする間も無く舌を絡められる。
悔しくて歯を立て噛みつけば錆の味が口内に充満するヌルリとした感触に嘔吐しそうになるも構わず睨みつけた。

けど、それに動じず唇をゆっくり離すと舌を舐めながら一角は楽しそうに喉奥で笑う
そして汗ばむ肌を抱き寄せ耳元で囁いた


「…お前は本当に気が強いな、そういう所に惚れたんだぜ?」


驚いた、何を言えば良いのか分からない

まさか自分に

陰では鬼と言われ色恋沙汰とは無縁だと思っていたのに。
阿近はこれまでに無い程動揺していた、けど不思議と嫌悪感は無く

−−−−寧ろ…。







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