駝鳥

□Atelier番外編〜その掌に包まれる物〜
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「ありがとうございました〜。」


背中越しに、閉まる扉の奥に消える

店員の声を聞きつつ

その店の小さな袋を持って
戸惑ったようにツトムは環に声を掛ける


「…おい、コレ…。」

そんなツトムに環は

「いつものメシ代だ。」

と言う

「…メシ代って、」


こんな高いもん食わせてねーよ、

と思いツトムは環にそのアクセサリーの代金を払おうとするが


「また旨いもん食わせてくれりゃあいー。」


そう言って

環はそのまま隣の店に入る

「……、」


納得いかない顔をしつつ、
半分はどういう態度を取ればいいのか判らないというのもあって

ツトムは諦めたように

けれど大事そうにその小さな紙袋を持って隣の店に入る


「これ二つ。」


入ってすぐにカウンターで何かを頼む環を見つける

オープンカフェのような作りのそこは

カウンターには沢山の種類の洋酒の瓶が並んでいて

様々な柄、掌サイズのショットグラス達が

ピラミッドのように積まれている

風鈴みたいに鮮やかな衣裳を纏った

陽気な骸骨たちが吊されていて

どこかの国の国旗が茶色い壁に掛かっていた


「食えよ。」

「…?」


差し出された手には湯気を上げるタコス


「ここの旨いんだよな。」
「……サンキュ。」


そのまま二人して熱いチリソースのかかったタコスを手にまたうろうろと通りをぶらつく


「この辺よく来るのか?」
「週末は殆ど、この辺かクラブにいる。…お前は?」
「この辺は初めてだな。」
「そーか。」

「うまいなコレ。」

「おう。」


フルーツカラーのスニーカーを眺めながら話す二人


「あー、アレいーかも。」
「?ん、好きそうだな、あーゆーの。」

「けど、この前買ったばっかだからな…。」


一緒に来た訳でもないのに当たり前に二人並んで歩いている

環は気付かれないように

ほんの少し、その距離を縮める

肩が触れる距離で

お互い自分が興味のある物を見つけては

キョロキョロと視線をさ迷わせる

けれどいつの間にか

食べ終わったタコスの包み紙を無意識に畳んでいる

その細くて器用だが、

骨っぽい男の指を

目で追って

指を絡めたいなんて考えている自分に気付き

環は苦笑いした


「なぁ、アレって…」

「ん?あぁフリマやってんだろ。」

「へぇ?」


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